妖精さんが現れたのだが……
目がかゆい。鼻水が止まらない。本当にうっとうしい。
この季節は好きだけれど、コレだけはどうもいただけない。
眠たくなるのがイヤなので薬も飲みたくない。眠たくならないクスリもあると聞くが、処方してもらうには病院に行かないと。誰がそんな面倒臭いコト――。
俺は腫れぼったい目をこすり、下を向くと絶え間なく雫の落ちてくる鼻の穴にティッシュを捩じり込みながら家に持ち帰った仕事をこなしていた。
「あぁ、これでやっと半分か……」
達成感などあろうはずもない。まだまだ折り返し地点。俺は気分を切り替えたくて一服する。
普段ならメンソールが頭をすっきりさせてくれるのだが、今夜は頭が重い。
「……魔法か何かでチャチャっと片付かねぇモンかなぁ」
そんな取り留めもないことを考えていると、ベッドの枕元あたりの窓がぼんやりと光り出した。
「花火って訳じゃないだろう?」
まだこんな季節だ。大きい音もしなかったし。
夜桜を楽しんでる輩が遠くで大騒ぎしている可能性もあるが、その割にずっと明るいままだった。睨みつけてもその明かりは消えそうにもない。
だんだん気味が悪くなってきた。
その気持ちを封じ込めるかのように俺は頬を二度三度叩き「よっこらしょ」と外にも聞こえるように声を出しながら立ち上がる。下の人から苦情が来ない程度にドカドカと足音を立てながら窓の前に向かい大きく深呼吸。覚悟を決めると勢いよくカーテンを引いた。
そこに居たのはふわふわと飛んでいる何か。――もとい誰か。
二人の少女が透き通るようなきれいな羽をせわしなく動かしながら上に下にと浮いていた。
俺がそっと窓を開ければ、彼女たちは丁寧にお辞儀をしてくる。
『初めましてアタシたちは妖精デシ』
『あなた様の呼びかけに応じて馳せ参じましたわ』
『何か困っていることはありませんデシカ?』
『わたくしどもの魔法ならば何でもござれ』
『さあ、アタシたちを家に入れてくれるデシ』
『こんなところで立ち話も何でしょう? ささ奥へずずいと――』
そんなことを言いながら、彼女たちは勝手に部屋に入ってこようとしている。
「……おまえたちって何の妖精なんだ?」
彼女たちは顔を見合わせると花がほころぶような笑顔で答えた。
『杉の妖精デシ!』『ヒノキの妖精にございます』
「……二度と来るなボケェェェ~!!」
俺は彼女たちの目の前で勢いよく窓を閉めた。
製作時間二十分。ノリで一気に書き上げました。
「妖精の魔法で花粉症を治してもらえばいいじゃん」なんていうガチのツッコミはご遠慮ください(笑)
ただ皆様に笑って頂ければ。
「花粉症って辛いよね」って同情も頂ければ。
読んで頂きありがとうございました。