プロローグ9
告白された後、王子に私の家まで送ってもらった。
出迎えたランディが話しかけてきたが、無視して走って部屋に入った。今頃悲しんでいるに違いない。しかし今はそんなことに意識を向けることができない。
あの時はとてもドキドキした。これが前世で出来なかった青春か、と思いながら馬車に乗った。ショタでも嬉しかった。しかし、どこか既視感があったのだ。あの光景に、あの言葉に。
そして、思い出してしまった。前世でやった事がある、ゲームの存在に。
” ――道に迷ったあなたは、恐怖に襲われながら暗い木々の中を抜けた。その瞬間、今までの暗さが嘘のように、美しい光が目に飛び込んできた。そこは星空が良く見える丘だった。美しい星空の下、あなたは一人の少年を見つける。
「……あなたは?」
それは幼い頃のルーク王子だった。
「私は、アンジェリカ。ここはどこ?道に迷ってしまって……」
「ああ、ここは――」
この出会いから意気投合したあなたとルーク王子は、度々この場所へ訪れ、他愛のない話をした。何回会ったのか、数えられなくなった頃。ルーク王子は「もうここへは来れない」と言い出した。
「私は、あなたと婚約を結びたい。私と共にいてほしい」
あなたはその言葉に、こくりと頷いた。その日から、彼は一度もここを訪れなかった――。 ”
それは、ルーク王子のハッピーエンドで明かされる過去の話だ。
前世の私は恋愛ゲームが大好きで、色んな種類の乙女ゲームを買った。その中でも、一番ハマったのはこの乙女ゲームだった。
「なのになんで今まで気づかなかったの!?ルーク王子も、ランディも、マシューも、名前完全一致な攻略対象なのに!!」