プロローグ7
高まった気持ちをぶつけるも、「いやはや申し訳ありません王子」とあからさまに気持ちのこもっていない謝罪を繰り返す男性に嫌気がさしたのか、ルーク王子は「もういい、出せ」とため息をつきながら馬車へ戻る。
その横顔はムスッとしており、くりくりの丸い目を細めて、天使だというのにどこか男らしく見えた。
向かい側に腰かけ顔をこちらに向ける頃には、あの不機嫌さはどこへやら、天使な笑みを浮かべていた。
「ごめんなさい、取り乱してしまって……」
「い、いえ……」
「本当は、その場所に着いてから話そうと思ってたんです。なので……ちょっと恥ずかしいですね……」
「はは……」
コミュ障にはなんと返せばいいかわからず、曖昧に笑う。
「それにしても……今日のミランダ様は一段と美しいですね」
「えっ!そ、そう、かしら……?」
朝から髪や服や化粧を何時間もかけて侍女にやらされたのだから、だいぶ良く見える事だろう。王家が主催したパーティーより気合が入っている。
まあ、外を出歩くことは聞いているので派手ではなく、動きやすく汚れの目立たない服なのだけど。
「こんなに美しい女性を、半日とはいえ私が独占してもいいのでしょうか」
「そそ、そんな!ほめ過ぎです……!私こそ、……いえ、私なんかが、ルーク王子と共に一緒の時間を過ごせるなんて……。夢みたいですわ」
「そんなにご謙遜なさらないでください。そうですね、夢みたいです。私がどれほどこの日を待ち遠しにしていたか。この気持ちが伝わらないのが心苦しい」
……この人は本当に私と同い年なのだろうか。すらすらと出てくる口説き文句に感心してしまう。対して私は完全に返す言葉を見失ってしまった。
「きっと、私も同じ気持ちですわ」
彼の気持ちはわからないけれど、適当に言ってにっこりと笑った。
馬車の揺れが止まり、王子は扉を開け地面に足をつける。
「ミランダ様、お手を」
そう言い、まだ座ったままの私に手を差し伸べる。私は急いでその上に手を乗せ、エスコートを受けた。




