プロローグ6
デートするからには、相手には良く見てもらいたい。
前世を含めると年下である相手に、こんな事を考えるなんて……、と気恥ずかしくなりながら、私はその日の立ち振る舞いや王子と話す話題を考え計画した。
ルーク王子との婚約は遠慮したいが、ダメダメな子とは思われたくない。
立ち振る舞いは覚えているので問題ないが、重大なのは王子との対話だ。勇気が出なくてやりたいこともできやしない。だからこれで実践できるかはわからないが、就寝前私の専属メイドに協力してもらい、王子とのデートをシミュレーションをしてもらった。それは3日坊主で終わったけれど。
そして本番のデートの日。
私はルーク王子にエスコートされ、馬車に乗りながらルーク王子が行きたいと言う場所へ向かった。
「き、今日はいい天気……ですわね……」
ガタガタと揺れる馬車の中、こちらを遠慮なしにじぃっと見つめる王子に、緊張しながら声をかける。
「そうですね。実は今日、ミランダ様にお見せしたいものがありまして……。晴れなければ綺麗に見られぬものなので、安心しました」
今日が訪れるまで、不安だったのです、と恥ずかしそうに笑うルーク王子を見て、緊張など粉々になり消え去った。
かわいい!かわいいっ!お姉さんショタコンになっちゃう!!絵面は全く問題なのだが、前世のせいでこれでは事案になってしまう。いや、いいのでは?罪というものは裁かれなければいいのです。私と彼は同い年。無罪。大無罪。大勝利!!
「そ、そうですわよね、星を見るなら晴れている方が断然いいですもの」
緊張の解けた私は、どもりはしたものの、すらすらと言葉を話せた。それを聞いたルーク王子は、ぽぽぽぽぽっと頬を赤らめ、驚いたような表情でこちらを見る。
「なっ、なんで知っているのですか……!?」
「え、ルーク王子から星を見たいと聞いたのですが……」
「そ、そうですけど……言ったつもりは……あれ……?内緒、のつもり、だったんですけど……」
伝わってしまったんですね、とルーク王子は残念そうに言った。
どうやらサプライズにしたかったようだ。可愛い奴め……。
「ふふっ、王子のお気に入りの場所なんですよね。そんな場所に招待していただけるなんて光栄です」
微笑みながら言うと、ルーク王子はこれ以上ないぐらい顔を真っ赤にさせた。
「それも知っているのか!?おいテッド!馬車を止めろ!!言ったの貴様だろう!!」
ルーク王子は馬車の扉を開け、運転している御者に向けて大声で叫ぶ。テッドと呼ばれた年老いた男性は馬車を止め、危ないですよと王子を叱るが王子は気にする様子なく文句を言っていた。
私を置いて馬車から降りたすぐ目の前で文句を言うその姿に、あんなにしっかりしててもまだ子供なんだなと微笑ましく見てしまう。
それにしても、あんなに天使な見た目なのに口調は結構男らしいんだね……。