プロローグ2
ミランダになる前、私は地球の日本というところで現役女子高校生をしていた。
そう、驚くべきことに、私は前世の記憶を持っているのだ。
人見知り、無口、無愛想の三拍子が揃った私は、クラスで話せる人が1人いる程度。
そんな私は、普通の日常の中で気付いたら死んでいた。詳しく言うと、死んだときの事は覚えていないし、未だに高校生の私が死んだと実感はできていない。しかし、意識が回復した時に、見知らぬ中世ヨーロッパ辺りで作られていそうな室内で、赤ん坊として泣きわめいていたら、高校の私が死んだのではないか、という思考に至るまでにそう時間はかからなかった。
初めこそ、夢だと思ったが、こんなに長い夢なんてあるだろうか。
高校生だった時、とあるテレビで、前世の記憶を持った子供のドキュメンタリー番組が放送されていたことがあった。あの時はほんとかー?なんて思いながら見ていたけれど、こんな体験をしてしまえば、それと同じ事が私の身に起きているのでは?と考えざるを得ない。私は前世の人格を持ったまま転生してしまったのだ。
高校生並みの知識があるんだから、これは私チート無双!?どどどどうしよう!なんて心躍らせていた時もあった。しかし、現実はそう甘くない。
文化が違えば言葉も違う。今までの知識は全く役に立たなかった。
令嬢としての作法の覚えは、他の子と比べて早かった。しかし、生まれ変わってもコミュ障の私には、覚えていても実行はできなかった。
そして気にするのは、周りの目。公爵令嬢たる者が、こんな人格でいいのか。あの子は出来損ないだ。前世の年齢を足してでも年上だろう人達にそう言われてしまえば、自信なんて付けられるわけない。結局私は生まれ変わっても、根暗でコミュ障のまま育っていった。
見た目は幼くありながら美しく、強気で皆を引っ張っていきそうな姿をしているというのに。中身と全くあっていない。
そんな生活の中、ルーク王子が出席するパーティーが開かれ、無理矢理連れられていった。私は声をかけられれば答えるだけで、完全に壁の花と化していた。母はそんな私に呆れた様子で、私を置いて他の貴族の元へ向かった。会場をくるりと見渡すと、同い年の女の子達が、まだ幼さを残す男性にきゃーきゃーと話しかけていた。きっと私の性格が違えば、あの輪の中に入れていたのだろう。前世でも羨んだその光景を見たくなく、会場の庭へと逃げて行った。
そこで、ルーク王子に出会ったのだ。庭の、手入れされた花や木を眺めていると、ルーク王子が護衛をつけて私に話しかけてきた。「お花を眺めるのが好きなんですの」「ここの庭は美しいですわね」だとか、緊張しながらも話した。同い年とはいえ、前世の年齢を合わせれば私の方が年上だ。近所の子供に接する感覚で話せたと思う。大人と話すよりはマシだった。
しかし。しかしだ。大した会話はしていない。なのに何故、ルーク王子は私の事を気に入ったのか。全く分からない。