舞台修正6
それからというもの、私は毎日ランディを立派な一匹狼に育て上げるべく、この世がいかに残酷で一人を強いられるかを、あることないこと交え大げさに言いきかせた。それでも、ランディは変わろうとせず、私にくっつきたがった。
頼りのマシューはあれから用事が立て込んでいるようで、しばらく会えそうにないらしい。
まだゲームのストーリーが始まるまで、当分ある。5年ぐらいはある。
しかし一緒の家に住んでいるランディは兎も角、マシューは出会える頻度が減っていく。パーティーで出会うことはあるだろうが、そんな場で修正なんてできたもんじゃない。
マシューには口説くことをマナーとして覚えてもらいたいのだ。イタリア男みたいな。しかしグズグズしていると「色んな女を口説くのは普通しない」と理解してしまう。
今、愛に飢えた様子を見せないどころか周りを遠ざける彼に、マナーだと誤解させる以外で口説くなんてこと絶対にしないだろう。
最悪マシューは諦めてランディを完璧に修正させるべきだろうか?
そう考え、ふと気付く。
当たり前すぎて聞き流していたが、ランディが一番恐れているのは、私と離れ離れになることなのだと。
「いい?この家はね、15歳になって、学園に入学するとき、試験があるの。そこで、言われたことができないとね、その……。捨てられちゃうの」
早速ランディのいる部屋に行き、深刻そうな表情でランディと話す。
「そう、なの?」
ランディは突然の姉の訪問に喜んだが、その言葉を聞いた瞬間顔を強張らせた。
「うん。そしたら、ね。私達はもう永遠に会えなくなっちゃうの……」
「お姉様と、離ればなれ……!?」
「そう。だから、ね。何事も、一人で出来るよう、しなきゃいけないの」
ランディはこんなバカげた話でも、真剣に聞いた。
ランディは原作通り、両親からも召使いからも良い扱いを受けていないから当分はバレないだろう。
「一人でなんでもできるように、頑張ってくれる?」
「……うん」
ランディは俯きながらも、しっかりと返事をする。
や、やった!第一関門突破!ごめん、ごめんよランディ!私だってランディを悲しませたいわけじゃないんだ、恨むならここがゲームの世界だという事を恨んでくれ……!
「あっ!あとね、ランディには、好きな子を剣術で守れるような、男前になってほしいの」
「好きな子を……」
「そう。……今のランディも可愛くて素敵だけど、男前なかっこいいランディも見たい、な」
「そしたら、お姉様、喜ぶ?」
「もちろん!」
そう言うと、ランディは決意したように、力強く頷いた。
「僕、かっこよくなって、お姉様を守る!」
実際守るのはアンジェリカなんだけどね。
なんて心の中で思いながら、上手く言いくるめできたことに内心ほくそ笑えんだ。
諦めなくてよかった!私!




