舞台修正3
ランディはダメだ。まずはマシューをなんとかしてから、マシューと協力してランディを修正していこう。そう考え、マシューと会いたいとしつこく母にお願いした。母は「来させるように言ってあげる」と言い、数日後にマシューが屋敷へ訪れた。
「ランディは?」
マシューは私にあいさつした後、いつも出迎えてくれるランディの姿が無いことに疑問を持ったようだ。
「……今日は、ふ、二人きりで……話したいなって……。だめ、ですかね?」
そう言うと、マシューはパチクリと瞬きしこちらを見る。
「駄目じゃないけど……突然敬語になってどうしたの。気味悪いんだけど」
「きっ、気味悪くないよ!?ま、まあ、来て」
気味の悪い話にはなるだろうけど。
本来のマシューは色んな女をたらしこむチャラ男だ。彼は結婚していない女性、つまり愛人の1人息子で、本妻に跡継ぎが生まれず、やむ終えず引き取られた過去がある。そのせいで愛されず、ミランダからも嫌味を言われ、愛に飢えた結果チャラ男になったらしい。アンジェリカと出会ってからは本当の愛を見つけ出し、アンジェリカだけを一途に愛するようになる。
しかし今のマシューは優男の皮を被った毒口男だ。笑顔で傷つく言葉を言うマシューにチャラ男要素なんてどこにもない。
だから私は彼をだますことにした。間違った知識を与え、間違いだと気づいた時にはもう癖が染みついてしまうのを狙う。
自室へ招き、ランディが隠れていないことを確認した後、マシューに向かい口を開く。
「わ、私の事、可愛いって、言って……?」
「……は?」
マシューは突然言われた言葉に、意味が解らなそうに眉をひそめる。私もこの切り出しはどうかと思うが、まずは甘い言葉にどれほど慣れているか確認したい。
「い、いいから、言って……!」
「なんで?王子に相手にされなくて僕に乗り換えようとか思ってるの?」
「なわけない!マシュー、いつもいじわるばっかり言うから、すらすら口説き文句言えなそうだなって……。気になった令嬢がいたとき困るでしょ?だから練習できたらいいなって」
「ミランダが僕を馬鹿にしてるのはよくわかったよ。練習しなくても大丈夫だから」
マシューは馬鹿にされたと解釈したのか、不機嫌そうにしながら言う。
「じゃあ、言ってみて……?」
「はあ?」
「聞いてみないとわからないし……。それとも、はぐらかそうとしてるだけで、やっぱ、言えないの……?口説き文句……」
そう煽ると、ムキになったのか「楽勝だけど」と言い、私の両肩に手を置いた。
「…………」
「…………」
しかし口説き文句が出ることはなく、ただ見つめ合うだけだった。




