舞台修正1
私がハマっていた乙女ゲーム。それは貴族が通う学園で、村娘だった主人公が入学する恋愛ゲームだ。
主人公はデフォルト名がアンジェリカの可愛い女の子。村で花屋のお手伝いをしていたが、偶然親が土に埋まっていた石炭や資源を掘りあて、成りあがり貴族となった。マナーの知らないアンジェリカが攻略キャラに目を付けられ、苦労しながらもマナーを覚え、恋愛をするというシナリオだ。
私はそのライバルキャラ。つまり悪役令嬢だ。ランディが弟なのと従兄がマシューなのが証拠である。
悪役令嬢ミランダは全てのシナリオのライバルで、ルーク王子ルートでは婚約者候補として、ランディは養子に手を出したから、マシューは気に入らない従兄だから、と邪魔をしてくる。そして皆決まってラストで断罪されミランダはざまぁ展開によくある終わりを迎える。
つまり、私が置かれている現状。それは前世持ち転生ではなく、とても素晴らしい夢トリップだということだ。ゲームの中に転生とか現実にあってたまるか。夢オチに違いない。
だとしたら私がやる事は1つ。
「アンジェリカの逆ハーレムエンドが見たいんじゃぁ~~~!!」
私が乙女ゲームをやる理由は、自分が主人公になり恋愛したいからではなく、アンジェリカというキャラの恋愛を見届けるのが楽しいからだ。
悪役にならない程度にアンジェリカを邪魔すれば、私と王子が結ばれる恋物語になるかもしれない。王子との恋愛だけを重視すれば、私だって恋したい女の子なのだから結ばれるよう努力するかもしれない。しかしアンジェリカが逆ハーレムになる可能性があるのなら、私の未来なんて重視することではない。最優先はアンジェリカを攻略対象が取り合ってるところを見る事!
このゲームのシナリオライターが書かなかった部分までじっくりと見てやる!変なところで夢冷めるなよバカヤロウ!
だとしたら私も頑張って悪役令嬢ミランダを演じないと!正直ミランダなんて興味ないからどんな嫌がらせをしてきたかなんて忘れたけど、まあ何とかなるでしょう!他の攻略対象もアンジェリカに惚れるはず……。
そこまで考え、思考が止まる。
……待って、これ再現するとしたらヤバくない?ランディとマシューの性格全然違うじゃん。
各シナリオで、攻略キャラの過去が明かされている。それを読むと、2人は幼少期の頃、救いのない中で皆に冷たく接しられ、あの人格になったとある。
つまり、私が優しく接したせいで条件が揃わず、2人の性格が変わってしまっている。
「どどど、どうしよう……」
今頃冷たくなんかできないし、しようにも可哀想でできない。
性格が変わってもあの子達はあの子達だけど、できれば原作に忠実にしてもらいたい。キャラ崩壊は、ちょっとやだ。
「冷たくしないでも、あの性格になれるよう、考えなきゃ……」




