明日もがんばろう。
「ここがゼルブの第242番ダンジョンの入口。確かできて半年だったかな?」
「へぇ……」
魔力は循環するエネルギーであり人が使った魔力が世界に霧散しその魔力が作り出すのがダンジョンだといわれている。結構攻略もされているしポンポンと生み出されている。
ダンジョンの最奥にはダンジョンコアと呼ばれる魔力の塊がありそれを吸収すると魔力量が上がるらしい……僕の目的にはそれも含まれている。
「1階層からですがよろしくお願いします」
「うん。強くなれるといいね。カードを出して」
「はい」
僕は探索者カードを取り出しシンディーさんのカードと合わせる。カードが少し淡くひかりパーティーを組んだことがカードに記させる。僕はそれを確認するとカードをしまう。
「それじゃあ行こうか」
「はい!」
腰に佩いたショートソードをなでる。10歳の時からの相棒だ。さぁ、がんばろう!
「はぁ!」
一刀両断! まぁ、最弱のスライムなんだけどね。剣を払い鞘にしまう。この程度のレベルでは魔力が増えた気がしない。
「すごいな……そこまで器用なら生活魔法は苦労なく使えそうだ」
「ん……そうですね」
まぁ、強くなるためには少ない魔力で魔法を器用に使う必要があったから鍛え上げた技術だ。しかし、魔力の精緻操作はどちらかといえば魔力の少ないネコの必修であり使い道は大抵生活魔法……花嫁修業の一環だ。タチを目指す僕としてはあまり魔力を器用に扱えることを褒められるのもいいことではないのだ。
ちなみに高魔力であるシンディーさんは離れた場所から腕を振るだけでスライムを消し飛ばす。力の差は歴然だ。
「あ、すまない」
「いえ、気にしてませんから」
一応、パーティーを組んだときに魔力を増やしてタチになるという目標があると説明しているため気を使ってくれているようだ。
「そうか……それにしてもそれだけ強いなら講習を受ければすぐにでも2階層へ進む許可も下りそうだ」
「本当ですか!?」
案外手ごたえが無くてこのままでは魔力が一定値に達するのは当分先だと思っていたがすっかり講習のことを忘れていた。シンディーさんが言うなら講習を受けてさっさと2階層へいけるようになろう。
「あぁ、本当さ。しかし、今日はそろそろ戻ろう。おそらく出る頃には日が沈んでしまう」
「え? もうそんな時間ですか!?」
収納から時計を取り出せば確かにいい時間だ。シンディーさんの言うとおり外に出る頃には日が沈んでいるだろう。
「帰ろうか」
「はい!」
成果は微々たる物だが確かにこの体の魔力は増えたのだ。この調子でがんばろう!
「すみません……」
街にやってきて探索者登録したところまではよかったが宿を探してなかった……。
その結果としてシンディーさんのなじみの宿に一緒に泊まる事となったのだ。
「いや、いいさ。丁度いいから明日からのことも話しておこうか」
相変わらずのいい人っぷりに思わず惚れてしまいそうだ。ネコになってほしい。ムリか……。
「明日は講習を受けてみたいんですが……」
「そうだね。講習自体は2階層に現れるオークについて色々教えてくれるだろう。その際に戦闘力の確認があると思うけどそれも問題ないだろうから必ず合格できるよ」
「はい! ありがとうございます!」
にこっと笑顔を向けられる。本当にいい人だ。僕も思わず笑顔を返す。
「明日もあるから今日は早く寝よう」
「はい。おやすみなさい」
「あぁ、おやすみ」
ちょっと失敗もあったけどいい出会いのおかげで助かった。明日もがんばろう。