俺、赤ん坊になりました
私の子ぉ⁉︎はい⁉︎今なんかとんでも無いこと聞いた気がするんですが⁉︎
…あれ?おかしいな…俺は確かにあの戦場にいた。年齢は三百六十五歳。インプラント兵になっていた。装備していたメインウェポンはバイブレーション・ニホントウだ。でもって所属していた会社は神風重工。今回の敵はスノウ・ストーム重工。
うん、覚えてる。しっかりと覚えてるぞ。
あれ?で、確か俺とケンジはその時に爆殺された筈…え?でも生きてるよな?…でも確か俺もケンジも首がもげたし。
何で生きてんだ?いくらインプラント兵っつっても不死身じゃ無い。首がもげたり心臓部が破壊されれば即死に至る。
じゃあ何で俺生きてんだ?
「どうしたのアイン?ほらいい子いい子」
女性は俺を抱っこしながらあやす。ちょっと待ってくれ。状況が全く飲み込めないんだが?
すると扉の奥…外から女性と同じ髪色の十五、六の少女が入ってきた。
勝気そうな少し吊り目な目で俺を見る。
「お母さん、その子が私の弟?」
「そうよミロ…可愛い可愛い弟でしょ?」
「確かに顔立ちとかは良いけど…泣きも笑いもしないのは不気味よ?」
いやいやいやいや…は?え?お、弟?俺が?…誰の?まさかそこの小娘のか⁉︎はいいいいいいい⁉︎ちょっ…えええええええ⁉︎
「でも笑ったらきっともっと可愛いわよ?」
「でもこの子なんか凄い汗かいてない…?冷たい汗…冷や汗?」
かいてないっす…俺赤ちゃんだから冷や汗なんてかけないっす。
無理してにぱっと笑う。瞬間その母親らしき方の女性の胸に埋まる。
「わー!カーワーイーイー‼︎」
タンマ!死ぬって!呼吸が…呼吸…あ、インプラント兵のままだから呼吸はしなくて問題ないか。ってそうじゃなくて!胸っ!恥ずい!
「お母さん!私にも抱っこさせて!」
取り合うな!捥げる!腕がぁ!脚がぁ!
ああああああああ!何なんだよここ!と言うかお前らの格好もなんなんだよ!なんだよその服!歴史図鑑とかに載ってる綿とかでできたやつじゃないのか?何でそんなロストテクノロジーで作られた服着てんだよ?貧民?じゃないよな?
「ほら、笑って笑って!」
姉らしき女性…ミロが揺する。少しくすぐったくてつい又にぱっと笑う。
「アイン見て。ほら良い天気でしょ?」
ミロは俺を抱き抱えたまま木製の扉を開ける。馬鹿っ!外なんてマスク無しじゃ死んじまうぞ⁉︎
俺の抵抗も虚しく、外へ抱き抱えられたまま出てしまう。あぁ、可哀想に…死んだな。
だが、そこには俺の予想を裏切るあり得ないものを目にする。
木々が生い茂り、空は青色で綺麗に晴れ渡っていた。え?…え?ココハドコ?
おかしいだろおいいいいいい⁉︎何で⁉︎何でこんなに綺麗なんだよ!
おかしい…俺の覚えてる外の世界ってのは大気は汚染されていて特殊マスク無しじゃ二分と生きてられない灰色の空に、廃ビル群。何より枯れた大地と太陽の代わりに大量に打ち上げられていた人工太陽が空にあったぞ⁉︎
なのに…なのに何だよこの澄み切った空気は⁉︎死ぬどころか生き返りそうだぞ!
「ふわぁぁ」
「あら?アイン眠いの?」
「うー…」
俺がついつい眠くなりあくびをすると母親らしき方の女性が家から出て来て俺の頭を撫でる。気持ち良いな。
取り敢えず、考えずに今をのびのびするか…いずれ答えは出るだろうし…
zzz…