俺、死にました
本日ラスト!
後部ハッチから次々と俺達インプラント兵が射出されていく。
そして目的の戦場の入り口…浜辺に降り立った。着陸装置が唸りを上げ、反動除去部が着陸寸前に作動、除去部の鋼板が弾かれるようにボン!と地面に打ち出される。
それによって衝撃を消された俺達は無傷で着陸する。
視界のコンソールパネルやウィンドウには敵の反応は一切ない。
「タイキ」
「ああ、ケンジ…おかしい」
俺とケンジは明らかに静かすぎるその場で訝しみ、敢えて進まず望遠システムにアクセスし遠距離を確認し、慌てて伏せた。
「おいおいどした二人共?」
男勝りの女兵のユアンがヘラヘラしながら寄ってくる。馬鹿!来るな!
「ユアン!伏せろ!死ぬぞ!」
「はぁん?何…をっ⁉︎」
パカンッ!と軽い音を立て、ユアンの強化カーボンで構成された頭蓋が最も容易く撃ち抜かれる。やはり、対インプラント兵用の鉄鋼ライフルだ。しかも遠距離カスタム。ヤバイな。
俺の装備はバイブレーション・ニホントウのみ。ケンジは電磁チェーンソーと中距離用電熱ダガーと17.0.ミリ特殊鉄鋼拳銃しかない。
本格的にヤバイな…
俺は首筋に配置してあるインカムで上空に停滞している搬送用飛行船、ゴジ-e309の電脳にアクセスした。
『アクセス認証完了…ご用件をどうぞ』
女性の電子音声がイヤホンから聴こえる。タイキは口早に要件を伝える。
「長距離用亜電磁レールガンを寄越せ」
『使用許可は?』
「無い。だがこのままだと壊滅だ…特権で許可解除。使用許可しろ」
一瞬停止したコンピュータは特権の一言で即処理を行う。
『ピー…認証しました。使用許可します』
俺の耳に聞きたかったフレーズが聞こえる。その時、上から巨大なトランク状のケースが降ってくる。
「タイキ!それは!」
「ああ、ユアンの仇だ!」
俺はケースを開け、中からレールガンを取り出すと即機体のハブと接続しチャージした。
スコープを覗くと案の定まだ気づいていない奴らは余裕の笑みで特殊装甲多脚型戦車のハッチから半身出したり遊んだりしている。蛮族共め。
俺は手始めにライフルを持った戦車…しかも二足歩行型かよ…悪趣味だな…を狙い、引き金を引く。
無反動機構のおかげで音も反動もなく亜音速を超える弾は戦車の装甲ごと操者を撃ち抜く。
ぶち撒けられる臓物と赤黒い液体、装甲。よし、確実に仕留めた!
俺はマガジンを確認した。まだ二十九発ある。これなら確実に仕留められる…
「ケンジ、他に敵は?」
「俺の視界上にはねぇな」
「残り四人…仕留めるぞ!」
「援護は頼んだぞ!タイキ!」
俺は再びレールガンを構え、次々とライフルを所持している戦車を蜂の巣にする。
ケンジはアクセレーターを作動させ、時速三百六十キロまで加速する。あっという間に数百キロ離れていた敵陣に入り込む。
「オラオラ愚民共が小賢しいんだよ!」
拳銃を撃ち、電磁チェーンソーを振り回しまさに修羅の如く戦うケンジ。その背後を狙う敵の脳天を俺は淡々と撃ち抜く。
そして暫くすると斥候舞台であったろう敵部隊は壊滅した。
俺は使い捨てのそのレールガンをその場に捨て爆破するとケンジと同じ様にアクセレーターを稼働させる。あっという間にケンジの横に追い付く。
「ナイスケンジ!」
「タイキもナイスアシスト!」
そう言ってから奥を再び拡大して見ると機甲兵団が来ている。あれか?今回の的は。
俺とケンジはアクセレーターを稼働させ、兵団に突っ込む。
「ははは!どうしたどうした⁉︎この程度の技術で世界を牛耳ろうってのか⁉︎ボンクラ共が!はははははは!」
ケンジは何かのスイッチが入ったのか笑いながら敵を刻み、撃ち殺す。
彼奴のバイザーの下は見たことが無いけど、今多分かなり悪鬼みてえな顔してんだろうな…
フルフェイスバイザーに返り血が飛ぶ。それも気にせず斬り刻む。ヤバイな、こいつ。
俺は腰のバイブレーション・ニホントウを構えた。
突っ込んでくる様々な量産型の特殊装甲多脚型戦車。
それらをイアイドーを駆使して刻む。通りすがり様にエンジン部、火薬庫部、何よりコクピット部の身体が入っている箇所を一太刀で切り裂く。
各機一撃で沈めていく俺達。
そして恐らく二千は居たであろう兵団はものの数分で壊滅寸前まで行った。
そして残り一機となった時、俺達は気づいた。隊長達が…さっきまで背後にいた部隊の仲間たちが…いない事に。
「掛かったな!この島国の猿共め!」
そう言って其奴は何かのスイッチを取り出し押した。其奴の言葉に気を取られていた俺達はその腕を切り落とすのが一瞬遅れたのだ。
背後から強烈な爆発が起こる。俺とケンジは見事に吹き飛ばされる。
飛び散る機械片。おいおいケンジ、頭もげてんぞ?さすがにインプラント兵でも頭がもげたら死ぬぞ?
ってあれ?俺の身体も舞ってる…て事は俺の首ももげたのか。
あ、さっきの敵もバラバラだ。段々視界がぼやけてノイズが走り出す。
俺はそ…こで…生き絶…えた……………………………………………………………………………………………………………………
プゥンと音が鳴り視界がクリアになる。何だ?もしかして奇跡的に蘇生できたのか?
そう思って首を上げ様とするが中々上手くいかない。あれ?何でだ。
ふと手を見ると赤ん坊の小さなフニフニとした手が見えた。
ただ、俺にインストールしてある解析アプリケーションで解析するとやはりバイオ筋肉で出来たインプラント兵の腕だ。
…え?でもこれ…赤ん坊の手だよな?
あれ?もしかして俺…赤ん坊になってる?
その時近くからガチャリと聞いたことの無い音がする…恐らく昔読んだ大昔の蝶番式の開閉扉が開いた音だろう。
目の前に現れたのは綺麗な茶髪の若い女性。何だこいつ?スノウ・ストーム重工の手先か?て事は…この姿もこいつらの新技術か?
しかし…
「☆♪♪○÷$$><54々^〒!」
と、何を言っているのかさっぱり分からん。どうしたものか…流石に言語解析用のアプリケーションはインストールしてない。
と思ったらピロン!と聞いたことの無い音が鳴り突然女性の声がクリアに聞こえた。
「可愛い可愛い私の子…どうしたの?お乳飲みたいの?」
…ええええええええええええ⁉︎はい⁉︎何て⁉︎わ、私の子ぉ⁉︎
おやスミス…(= ̄ ρ ̄=) ..zzZZ




