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入れ違う影

短編……を、大量に繋げたら長くなりました。



 その夜

 倉庫にはまだ灯りがつけられていた。肌寒い空気の中、既に溢れそうな灰皿に更に一本、また一本と吸殻を捨てるのはイゴールによるものだった。何杯目かもわからぬコーヒーを啜り、地図を広げる。

 乱雑に広げられた地図にはいくつもマークがつけられていた。マキシムが潜伏しそうな場所を片っ端から調べているのである。目の下には隈が出来、タバコとペンを握る手は苛立ちに震えていた。

 その様子を眺めながら同じく地図を開いていたルスランが、おずおずと声をかける。


「あの……流石に吸いすぎでは……」


「は?」


 寝不足と過労で苛立つあまり発せられた喧嘩腰の返事にルスランは反射的に背筋をピンと伸ばす。彼はクレムリンのエリートにしては気が弱いらしい。


「ティーナを早く見つけなきゃなんねぇんだ。寝てる暇ないんだよ。寝ないためにはタバコとコーヒーが一番なんだ。わかるか?」


「うぅ……俺はタバコを吸わないからわかんないけど……」


「ああ、未成年だもんな……って、そんなこと言ってたらヴォートカをらっぱ飲みしてるあいつも未成年だが……」


 イゴールが千晶を血眼になって探す様子をルスランは不思議そうに見た。


「イゴールさんは……ティーナが好きなの?」


 はあ?と、さっきのような返事をされまたルスランは緊張する。


「あいつをウザったい妹のようには思っても、女としてはナシだろ。


 俺より酒豪で、話も通じないバカで、しかも血の気盛んだぜ?殺しの腕もピカイチだ。尊敬はしても愛せないね。むしろいつ殺されるのかヒヤヒヤする」


「あ……ああ……そうなんだ……」


 なぜか安堵の息を吐くルスランを、今度はイゴールが不思議そうに見た。


「なんだ、お前は好きなのか?」


 するとルスランは顔を真っ赤にして、慌てて手を振り回した。


「ち、ちが……っ‼」


「見え見えだな……あいつのどこが良いんだ?ルックスしか良いとこないだろ」


「そんなことない!」


 好きじゃないと否定して、今度は魅力について必死に擁護するのだからわかりやすい。イゴールは苦笑を禁じ得なかった。


「天然に見えて周りを見てるし、意外とあまえん坊だし、美味しそうに何かを食べる姿とか可愛いじゃないか‼」


 捲し立てるように言ってようやく自分がおかれている状況を知ったらしい。顔を真っ赤にしたまましぼんで行く姿を見てイゴールは笑い出した。


「あっはは!まさかこんな形でティーナの色話が聞けるなんてな‼」


「あ……う……」


「ちなみに馴れ初めは?一目惚れか?」


 意地の悪い笑みを浮かべ、追撃の手を緩めない。ゆでダコのように赤く弱り果てたルスランだが、その問いを受けてばつの悪そうな表情を見せた。


「……った」


「ん?」


「最初は嫌いだった。ティーナのこと」


 おや、意外。

 てっきり一目惚れからの甘い展開がくると思ってたのに。


「じゃあなんだ、喧嘩して仲直りから恋に発展したのか?」


 ルスランは最初こそ黙ったものの、やがて重い口を開いた。


「ティーナがきらいだった。俺達は最初、あいつを虐めてたんだ」


 そうしてポツリポツリと語り出す。




 クレムリンは殆どがロシア国民だった。ロシアの軍人として国に貢献できる。それを誇りにしている者が殆どで、ロシア出身ではない者は理不尽な差別を受ける傾向にあった。

 あるときは物を隠し、鬱憤がたまれば暴力で晴らす。

 日本人である千晶もその被害者であり、千晶の代で苛めのリーダー格だったのはルスランであった。


 気にくわなかった。ロシア人でないくせにクレムリンに存在し、特に良い成績を修めていた千晶は格好の的だった。

 いくら苛めに遭っても眉ひとつ動かさず暴力を甘んじて受け、ただ黙々と任務をこなす彼女が、不気味にさえ思えた。


 しかしある日それは覆される。


 紛争地帯での実地訓練。どこかの国の反政府派がクレムリンに襲いかかってきた。

 普段なら難なくこなせた任務だが、その日に限って敵勢が多すぎた。判断を誤った指揮官は同じクレムリンの同期。ロシア最強の部隊は判断ミスにより窮地へと追い込まれる。

 大勢が負傷した。ルスランに至っては足を撃たれ、満足に歩けない状況だった。

 手近の山に身を隠し、上層部に判断を仰ぐ。しかし下されたのは任務の完遂ただこれだけ。


 誰もが思った。動けない者は見捨て、自分達は生きて敵の情報を持ち帰る。


 こんな少数で任務を完遂出来るはずがないと。


 しかし千晶は違った。


 彼女はまず、負傷者の把握と手当てに努めた。苛めの対象であった彼女の施しなど誰もが拒もうとする。それでもいくら罵声を浴びても彼女はそれを徹底し、そして動けるメンバーに向かって吠えたのだ。


「同胞を見捨ててでも生き延びたい腰抜けはさっさと行け‼クレムリンであることを誇りに思うのなら、兵士としての姿を見せなさい‼」


 彼女はクレムリンで怒鳴ったりしたことがない。そんな千晶の姿に誰もが驚き、そして反発した。

 ロシア人でないくせにクレムリンを語るな。威張るな。中には胸ぐらをつかんだ者もいる。

 しかし彼女はそれに動じず、強い眼差しでにらみ返した。


「命惜しさに仲間を助けようともしない。ロシア人はそういう人種なの?」


 正論を突かれ、反発は小さくなってゆく。だがこの状況を打破できる術もないのも事実だ。

 すると今度は彼女は命令になかった作戦を提案した。訓練生時代に教わったゲリラ戦に、クレムリンならではの体術を組み合わせた作戦だった。

 軍隊では常に一定の人数でグループを組み、動くことがセオリーだ。しかし彼女の作戦の場合、個人で動くことで範囲を広げると言うものだった。


 木の上、沼の中、敵に接近する戦闘員。それらで不意打ちに不意打ちを重ねる。ゲリラでも洗練された強者にしか成せない技だ。

 出来るのか?誰かの問いかけに千晶は狂暴な笑みを浮かべた。まるで血に飢えた獣のような顔つきに、そこにいた皆が背筋を凍らせる。


「1人で動くことが怖い?ならここで黙って見てなさい」


 挑発とも呼べるその態度に動けるものは乗せられた。負傷者は山で待機することになり、こうして千晶の作戦が開始される。


 敵勢に突っ込むメンバーには千晶が含まれた。


 そして彼女の本領は発揮される。


 狂った狼のような遠吠えと共に敵の群れに入り込み、ナイフとマシンガンでたちまち敵は巣をつつかれた蜂のように右往左往と逃げ回る。そして木や沼に待機していた仲間に背後から撃たれ、数はどんどん減っていった。


 少なくなった敵勢はやがてクレムリンに包囲され、皆殺しとされる。一番危険な役割を担った千晶は死体の広がる世界の中心で横たわっていた。


 クレムリンの勝利に皆が歓喜する。千晶を讃えようとする。

 しかし千晶は微動だにせず、ただ倒れたまま


「……お腹空いた」


 と、呟いたのだった。





「待て、あいつ戦場でも常に腹ペコなのか」


「あはは、俺達も驚いたよ。傷ひとつないのに倒れてて、運ばれてさ。それで聞いてみたら只の空腹」


 ちなみに一人が恐る恐る肉の缶詰を開いて差し出したら、ようやく餌にありつけた犬のようにがっついて、そしてカムバックしたそう。


「でも、それ以来ティーナへの苛めはなくなったんだ。実力だけじゃない。異国の人だけど同じように誇りを持ち、仲間を見捨てない奴。皆がそれを知ったからね」


 こうして千晶は実力、人格共に認められ、クレムリンから名誉と信頼を勝ち取ったのだ。今では皆が千晶を慕い、男女問わず憧れを向ける者も多い。


「僕らは皆、ティーナが好きだよ。マキシムだって彼女に想いを寄せるくらいなんだからね」


「マキシムも?」


「そうだね……さっき話した件から随分経つけど……」




 クレムリンの人気者となった千晶は部隊の打ち上げでも引っ張りだこだった。ある作戦に成功した打ち上げで、皆が酒を飲んで騒ぐ。すると恒例となっていたのが、賭け事だった。

 クレムリンは実力重視だ。力に自信のある奴がナイフや近接格闘の模擬戦で闘い、負けた方が勝った方の言うことをひとつ聞くと言うもの。リングを囲むようにしてギャラリーが騒ぎ立てるのも醍醐味だった。


「既にティーナは人気者でね。勝負を持ち込まれては「俺が勝ったら付き合ってくれ」とか「結婚してくれ」ってしょっちゅうだったんだ」


「はぁ?あいつ、そんなにモテてたのか⁉」

「知らなかったの?」


 中には女子もいて、「一本とったら私とデートして!」とか「キスして」とも言われてたとか。


(女からも……俺が思うのもあれだが、ロシアって怖いな……)


 まぁ、結果は眼に見えてる。近接戦で無敗を誇る千晶だ。むしろ勝てたり一本でも取れる方が奇跡である。

 こうして数々の交際を申し込まれた千晶は賭けに勝ち、敗者から購買のピロシキやウォッカをおごってもらっていたらしい。花より団子とはこのことか。

 その敗者にはルスランは勿論、マキシムもいた。


「あいつは最初からティーナに肩入れしてたんだ。成績も上位で一緒にいることも多かったからね」


 いつしかその代でトップを彩る3人は千晶・マキシム・ルスランとなっていた。3人は様々な任務を共にこなし、技を磨いてきた仲だと言う。


 過去の話を聞いたイゴールは旨そうにタバコを吸いながら、かつての千晶の姿を想像した。

 普段は静かで、しかし愛犬のように愛されていて。それなのに戦場では急に人が変わり、あの狂暴な顔をむき出しにする。

 普段の天然なキャラからの戦場におけるカリスマ性。そしてそれに刺激され、彼女を愛したクレムリンの面々。

 戦場という時点で青春とはほど遠いが、それゆえに堅い絆が彼らにはあるのだろう。


 だがそうなると……


「じゃあティーナの遺体が見つからないのは……マキシムがティーナを好きだから、殺さずにいるってのか?」


 これにはルスランも首をかしげた。


「好きなのは間違いないけど……今のマキシムは本当に読めないんだ。彼の性格とかから今日のマンションに潜んでる説が濃厚だったのに、ハズレだった……まるで人が変わったみたいな気がする」


「じゃあお前にも潜伏先は予想できないのか」


「出来たらとっくにしてるよ。ティーナを失いたくないんだ。俺だって必死さ」


 少し憤慨したように鼻を鳴らす。それもそうかと思い、イゴールは地図とのにらめっこを再開した。既にマークは40ヶ所以上あり、まだまだ増える見込みだ。


「じゃあさっさと見つけてやんねえとな。俺はティーナに恋愛感情はないが、あいつに命を救われたこともある。仕事のパートナーとして、借りを返さんと」


 ルスランもうなずき、地図を見ながら片手で端末を使い情報収集を始めた。

 ふと、イゴールは思い出したように言う。


「そう言えばイヴァンさんからの連絡がこないな……」


「今、ロシアにいるはず」


「イヴァンさん……数ヵ月前からロシアに行ったり来たりを繰り返してるみたいだが……お前、何か知ってるか?」


「ああ、クレムリンの幹部から呼び出しを受けてるみたいで……確かマキシムの件も、それで知ったらしいよ」


 イゴールの眉間に微かに皺がよせられた。









 真夜中の薄暗い部屋で電話が鳴り始める。恰幅のいいロシア人は受話器を取った。


「私だ……なに?マキシムはいなかっただと?狂犬もか……

 ……そうか、ならルスランに伝えろ。草の根掻き分けてでも見つけ出せ、とな」


 乱暴に切られる受話器。シトラニコフ大佐はウオッカをグラスに注ぐと、やれやれと首を振った。


「……まったく……早く害虫を取り除かんとな」


 それを扉の向こうでイヴァンは黙って聞いていた。









「………ここまではお前達の予測通りなんだな」


 モルゲンのカウンターでタバコをふかしながら天田が問いかけるのは、ボックス席に腰を下ろす山縣と五木にだった。


「ええ。マキシムの行方はわからず、千晶さんの安否すら判明しておりません」


「………なら……」


「ですが、私達も千晶さんがどこにいるのかはわかりません。こればかりはマキシムに聞き出すしかありませんよぉ」


 五木は珍しくワインを口にしていた。


「………このままではお前達の言う通りに……」


「そうですね。しかし違う点があります」


 2人はすっくと立ちあがり、ドアへと歩いた。


「紫音さんがいる。これがどう作用するかは……私達にもわかりかねます」


 そう言って店を出て行くのであった。






「……嘘吐き」


「仕方ないだろう?ここで本当のことを知らせたらマスターは調べようとする。そうなれば将斗さん達が飛んできて、台無しになりかねない」


 山縣は五木を車の助手席に促すと自分は運転席に乗り込んだ。そして携帯を取り出す。


「俺は…………ーーに、連絡する。お前は紫音さんに連絡を入れろ」


 はぁい、と間の抜けた返事をし、五木も携帯を取り出した。

 端末に記された日時にチラリと目をやり、気だるそうに目を細める。


「……はぁ……予測が難しくなりますねぇ」


 そうしてメールを打ち込むのだった。










 紫音ちゃん……


 幼馴染みに呼ばれる夢を見た。


 遥か遠くに幼馴染みはいる。手を振っている。


 ああ、これは夢だとすぐにわかった。

 だって彼女は今、負傷して生死すらわからないのだから。

 それでも会えたのは嬉しいし、思わず駆け寄ろうとする。しかしいくら走っても走っても距離は縮まることなく、むしろ遠退くだけ。


 なんて質の悪い夢だ。そう悪態をつき、幼馴染みの名前を呼ぼうとした。


 しかし彼女の背後に得体の知れない影が生まれ、幼馴染みに迫っていた。

 なんだかよくわからないけど、あれに触れたらだめだ。きっと帰ってこれなくなってしまう。それだけはよくわかる。

 必死に名前を呼ぶ。しかしこちらからの声は届かないのか、幼馴染みにリアクションは見られない。


 やがて影は幼馴染みの足にまとわりつき……



「…………っ!」


 紫音はそこで目を覚ました。

 いつも泊まっている千晶の部屋。さっき将斗達にキツいことを言われ、部屋着のままベッドで泣いていたらそのまま眠ってしまったらしい。


 足手まとい


 思い出すだけで悔しさのあまりに涙が滲んでくる。自分はこのままなにもできずに、夢のように千晶と離れてしまうのか。

 普段は頼もしい将斗や昴だが、彼らだけでは千晶を救うことが出来ない気がする。このままでは夢のように千晶は手の届かない所に……


 しかし、今の自分に何ができる?

 圧倒的に情報が少ない今、後方支援をスタイルとする紫音にも、ひたすら情報を集めて洗うことしか出来ない。なら時間が足りない。千晶が負傷している今、時間は刻一刻と迫っているのだ。

 どうすればいい。なにから取りかかればいい。


 熱を帯びた頭をひねるもなにも出てこない。むしゃくしゃした気持ちを枕にぶつけると、携帯が鳴り始めた。


(こんな時間に……?)


 発信者は五木からだった。千晶のことかと思い、胸がドキッと飛び上がる。

 一瞬躊躇った後に出てみると、聞きなれた声が聞こえてきた。


『あ、紫音さん?遅くにごめんなさぁい』


「五木さん……千晶ちゃんの居場所がわかったのですか?」


『え?』


 意外、と言わんばかりのリアクション。


『紫音さん……知ってたの?』


 少し目頭が熱くなったが、紫音は事の顛末を話した。五木は珍しく真摯に聞いてくれて、話終えるときには紫音の声は涙で震えていた。


「五木さん……私はこのまま……また失っちゃうんでしょうか」


 鼻をすすり、何度もベッドに涙を落とす。

 これ以上の不安は正直、もう限界だった。


『……そっか……もうそこまで変わっちゃったのか……』


「え?」


『ううん、何でもないですよ~』


 あっけらかんとした声を聞いて、どこか安心感を覚える。紫音は黙って、五木の言葉を待った。


『えっとですねぇ、確かにこのままだと千晶さんは危険です。が、紫音さんにあることをしてもらえれば助かるかもしれませんよ?』


 それは天啓のように紫音の頭に鳴り響いた。

 真っ暗闇の向こうから差し込んだ一筋の光。それが見えた気がする。

 だが五木の声は徐々に真剣なものへと切り詰められていった。


「本当に?‼」


『ええ。ですが……とても危険なんですよ。下手したら命に関わります。それでも……やりますか?』


 一度瞼を閉じた。自分を否定した将斗達。笑いかける千晶の姿。そして……あのテロ事件で大切な人を失い、涙にくれた日々


「やります。やらせてください」


 怖くないと言えば嘘になる。しかしここでなにもせず、最後に泣くくらいなら。


 紫音の返事を待ってましたと言わんばかりに五木は声高らかに


『じゃあメールを送りますね。詳しい内容はそこにあるから、将斗さん達には内緒でお願いしますよ』


 そう言って電話は切られた。続いて送られてきたメールには…………………………

……………………

……


「え?」


 千晶救出とどう関係するのかまったくわからない内容が書かれていた。


突然ですが……


 氷雪の音楽隊で登場したユウヤ達、ブレーメンの一行はこの時、南米にあるらしい「施設」へと向かってます。なぜ今話すのか。

 今後のためです

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