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僕の大冒険

血とか苦手な人は要注意です。一応残虐描写有です。耐性ある人には物足りないでしょうけど。すいません

僕は勇者だ。

皆が認める勇者。


今日も仲間であり魔法使いであるケイコと、魔物を退治しに行く。

それが勇者である僕の役目であり、神から与えられた使命だ。


最近魔物が増えたと言われる山に到着した。

ケイコはなにも話さない。ただひたすら下を向き、僕とは目も合わせようとしない。

それでも一緒に行動している。僕は勇者でケイコは僕の大切な仲間なのだから。


山に入ってから一時間ほど過ぎた。ケイコが遅れていた。少し僕のペースが早過ぎたようだ。

近くに川を見つけた僕は、休憩を取ろうと提案し腰を降ろした。


休憩の間も沈黙。僕もケイコも一言も発しようとはしない。


これではいけない。


僕はそう思った。ケイコは大切な仲間。

僕に非があろうとなかろうと、謝ってしまえばいい。それでケイコと仲直りが出来るのならそれでいい。


少し休んでから捜索を再開した。そしてケイコに謝った。

だけど、ケイコは僕の事をまだ許してはくれないようだ。

理由はたぶん、僕が喧嘩の理由を思い出せなかったからだ。

ケイコはなにも言わず僕の後ろを付いてきている。


魔物の巣は簡単に見つけることが出来た。

僕は魔物の巣に入った。そこには4体の魔物がいた。

僕はケイコに下がっているように言い、ナイフを構えた。

だがケイコは下がろうとはしない。下がろうとせずに僕の腕を掴み、言った。


「魔物にも命はあるの。だからお願い、見逃してあげて。」


僕は思い出した。ケイコとの喧嘩の理由を。

僕は勇者。だから魔物を倒さなければならない。だけど心の優しいケイコは、魔物を傷つけたくないと言ってきた。

そんなことで口論になっていた。僕は魔物の方に顔を向けた。

4体の内3体は僕の存在に怯え、隅で震えている。残りの一体は僕の方へゆっくりと近づいてくる。


僕は迷っていた。

本当にこれでいいのだろうか。

ケイコは言う。


「魔物が人を襲うのは仕方のないこと。彼等にとって私たちは、私たちにとってのパンや米なのだから。」


僕の使命は魔物を倒すこと。だけど、僕は迷っている。

怯える者を殺すのはいくら魔物とはいえ、ただの虐殺ではないだろうか。


そんなことを考えていた。考えていたら近づいてきていた一体が、僕に飛びかかってきた。

僕は必死に抵抗したが、倒されてしまった。

僕は仰向けになりながら魔物と激しい攻防を繰り広げている。

そうこうしているうちに、怯えていた3体のうち2体が向かってきた。


僕はなんとか態勢を立て直すと、壁に張り付いているケイコに援護を求めた。

だがケイコはこちらを見ているだけで行動しようとしない。

不意の事に驚いているのだろうか。

僕は一人で魔物達を片付けることにした。


一体、二体、三体と順調に片付けた僕は、残る一体を片付けようとナイフを振り上げた。その瞬間、僕は背中を刺された。


ケイコだ。


ケイコが僕の背中をナイフで刺していた。

すぐにナイフが抜かれ、傷口からはドプドプと血が流れ出てきた。

場所が悪かったのか、出血の量が思った以上に多い。


僕はとりあえず、目の前の魔物の首筋をナイフで切り裂いた。

そこから吹き出した魔物の血が、僕とケイコを濡らした。

いや、ケイコを濡らした血は僕のものかもしれない。


僕は最後の力を振り絞り、ケイコを刺した。

何故こんなことになってしまったのか、僕は地面に俯せに倒れたまま考えていた。


「あなたがいけないのよ」


ケイコはそう言うと、動かなくなった。

僕はケイコの言葉の意味を、最後の最後まで理解出来なかった。


そして僕は死んだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] シリアスな話ですね・・・ なんだか矛盾が矛盾を呼んで追いつめられていくという 勇者の心の苦しさに共感してしまいました
[一言] 急なところから始まっていたけど、とてもおもしろかったです。
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