私の彼は小説家だった。
好みの分かれるお話です。
苦しむほど、その世界が色づくというのなら、それはなんて淋しくて神聖なことだろう。
優しくて暖かくて少しくすぐったい。
それが彼の描く物語。
出てくる登場人物は皆どこか抜けていて、でも愛らしくて一生懸命。
時々、卵の殻同士をぶつけ合わせるような、こつんっとした衝突を繰り返しながらも、みんな仲良く生きている。
彼が紡ぐのは、そんな春の陽だまりのような優しくて、温かくて、愛しい物語。
そして、そんな物語を書く彼も、やっぱり優しくて少し抜けている人――――私の愛しい人だった。
「ねぇ、怒ってるの?」
彼は物書きのくせに私の心情を読むのは苦手だ。
抱きしめたクッションに顔を埋めたままそんなことを呟けば、困ったような声が降ってくる。
「えー……、物書きのくせにって偏見じゃないかなぁ」
彼が二人掛けのソファに腰かけている私の髪に触れる。
髪の毛を触るその指が白くて細くて、すぐ折れてしまいそうだと思っていたのは付き合う前までだ。
繋いでみれば、女の子より繊細だと思っていたその指も手も、ちゃんと男の人のものだった。
「よくありますよね、この時の登場人物の気持ちを答えなさいって問題。私、あの問題、苦手だったんです」
「ふぅん。まぁ、よく聞くね。本人じゃないのに気持ちなんてわかるかーってやつ?」
髪を梳かれているのが気持ち良くて、つい怒っていたのを忘れて姿勢はそのままに彼を見上げる。
「違います、そういうことじゃなくて」
「もう怒ってない?」
彼のこういうところがもったいないと私は思う。
再び、ぼふんっとクッションに顔を埋めて、ぱっぱっと彼の手をぞんざいに振り払う。
「もう! そもそも怒ってると思うなら、怒ってるか聞くのは間違いなんですよ!」
「えぇー、機嫌直してくれたんじゃないの?」
困ったように、彼は顔を上げてよと情けなく私の肩を遠慮がちに叩く。
それが何度も何度も繰り返されるものだから、しょうがなくクッションから顔を離して半目で彼を睨む。
「…………どうせ私が何に怒ってるかわからないんでしょう」
空気の読めない彼は顔を上げた私にぱっと表情を明るくする。
「うん!」
そこでなぜ笑顔で頷くのだ。
「……やり直しです」
「えぇー!」
悲壮感たっぷりに叫ぶ彼に、むーっと膨れていたはずの頬はいつの間にかやっぱり緩んでいて。
拗ねたふりでそっぽを向いたまま、手だけを彼の方に差し出す。
きょとんとしたような間があってから、ふふっと微笑んだ気配がして、私の手に彼の手がそっと重ねられる。
それだけですべてが許せてしまう。
少し抜けているところも、空気が読めないところも、すぐ頼りなく困ったように笑うところも、みんな。
彼が、彼である限り、私は私のすべてでもって、彼を好きでいるんだろう。
とても、悔しいような、くすぐったいような気持ちのままで。
――――ずっと、そうだと信じて疑わなかった。
それからしばらく、彼となかなか会えない日が続いた。
けれど、会えない日が続く一方で、世間で彼の名前を聞く機会がだんだんと増えていった。
知らない誰かが、彼の作品の話をしている時は、そっと耳を澄ませた。
雑誌の片隅に彼の記事を見つければ、心が弾んだ。
―――――――――でも、どうしてだろう。
その変化が、どこか心に影を落とした。
情けなく眉をハの字にして笑う彼が、会えないうちに遠くに行ってしまうような気がしていた。
強く手を繋いでいたいわけではなかった。
ただ、そっと、重ねられたその手だけは失いたくなかった。
でも、どうしてだろう。
どうして、恐れていることほど起こってしまうのだろう。
「久し、ぶり……」
数か月ぶりに会った彼はとても痩せていて顔色も悪かった。
物書きというものは、とても歪な生き物だ。
ある時、誰かがそんな感想文を夏休み明けに発表していた。
題材となった本のタイトルも、作者の名前も、そしてその文章を読み上げていた同級生の顔も覚えていない。
それでも、その言葉はなぜかずっと覚えている。
あぁ、そうだ。
彼はその後に、こう続けたのだ。
なぜなら――――
「別れよう」
彼がそう言ったのは、紅茶にちょうど角砂糖を落とした時だった。
運ばれてきたコーヒーに手を付けることもなく、彼は俯いたままそう言った。
「びっくり、しちゃいました」
取り繕えなかった一瞬の空白を振り払うように、とりあえずおどけて笑ってみせる。
「だって急に言うんですもん」
少し拗ねたように言葉を重ねる。
でも、彼は何も答えてはくれなかった。
スプーンを持つ手が震えてしまう。
それでも、平静を装って琥珀色の紅茶をかき混ぜる。
カップの中でスプーンが何度もぶつかって、その度に鼓動が早くなる。
久しぶりに会った彼はひどく疲れた顔をしていた。
お店に入っても私と目を合わせてくれなくて、それでも私は久しぶりに二人で過ごせる時間が嬉しくて。
だからかな、とぼんやり思う。
琥珀色の波紋を見つめて、それが収まる頃にそっと私の中の波も引いていくような気がした。
「聞きたくなかったけど、聞いて、いいですか?」
私の言葉に、ゆるゆると力なく顔を上げた彼の瞳は、暗くて、それがどうしようもなく苦しかった。
昨日、彼の書いた最新作を私は最後まで読み終えた。
世間が彼を偉大な作家として評価した、その作品。
本屋に平積みにされ、どの本屋にも大きなポスターが貼られていた。
まるで、知らない有名人のように祭り上げられた彼がそこにはいた。
頁をめくる時に、指先が震えた。
きっと、わかっていた。
この物語は彼が以前に書いていた、優しい世界などではないのだと。
わかっていた。
この物語は、きっと血を吐くような残酷な物語だと。
物語は失うところから始まらなくちゃいけない。
やがて、彼はそう口を開いた。
僕の話は綺麗なだけで、面白くないと言われた。
続く言葉は悲しみに染まるでもなく、ただ淡々と零された。
人に読まれる話を書くには、初めに主人公が何かを失うか、奪われるかしなくてはいけないと言われたよ、と。
まっくらな瞳は瞬きをすることもなく、ただ俯く。
『君の書く喪失はとても味気ないね』
初めにそう言ったのは誰だったか。
『まるで中身のないアップルパイみたいだ。幾重にも重なった層を暴いたところで所詮、中身は空っぽ』
反論する気が全く起きなかったのは、自分でさえそう思っていたからだろう。
僕はきっと疲れていた。
初めの一作以来、書いても書いても、誰の目にも止まらない物語たち。
本屋で自分の書いた作品の前に一日立ち尽くした日があった。
足音はいくつも聞こえるのに、それは止まることなく通り過ぎていく。
本が好きだった。でも、そこに収まった背表紙はまるで牢獄から僕を見つめているようだった。
でも、自分ではもうどうしようもできないと思った。
愛する優しい世界は、時々ひどく息苦しかった。
温かく優しいものを柔らかく書き上げようとするたびに、それをびりびりに破り捨ててしまいたい衝動に駆られた。
ここは迷路なんて優しいものでなく、まぎれもなく出口のない地獄だった。
そんな風に頭を抱える僕に歪んだ三日月はそっと囁いた。
『だから、そんな君にいいことを教えてあげよう』
顔を上げてしまったのは、目を合わせてしまったのは、何かに縋りたくて仕方がなかったからだ。
『君にとびきりの喪失を書かせてあげる』
それが、何を意味するのかなんてもうどうでも良かったのだ。
僕はどうしても、人の死が上手く描けなかった。
死というものの概念も、周囲の人間の心情も、物語としてのエンターテイメントに落とし込めなかった。
僕は自分が不器用な人間だという自覚が少なからずあった。
想像しなければ書けない。
寄り添わなければ書けない。
登場人物になり切らなければ書けない。
『君はとても素晴らしい書き手だ。君には“本物”が書ける。まるで経験したように文字で表せる』
だから、
『でも、だから君は死が書けない』
でも、なら、きっと方法は見て見ぬふりをしていただけできっとあった。
『わかるでしょう』
囁かれるままに、万年筆に手を伸ばした。
『君の一番大切な人、』
これから絶望に染まるにはもったいないほどの白が机の上に広がっている。
耳元で声が嗤う。さぁ、とその声は僕の肩を叩く。
『さくっと殺してしまいましょうか』
君を、殺した。
作品の中で何度も、何度も、いろんな方法で君が死ぬ。
それを怖いくらいに、気が狂うほど想像して、泣きわめく。
でも、それを書いた、書くことしかできなかった。
怖いくらいに書けたんだ。
指先が追い付かないほどに、恐ろしいほどの速さで真っ黒な字が白い紙を埋めて。
それは今まで感じたことのないような、仄暗い歓喜。
自分の中で何かが壊れていくのを、どこか冷静に感じた。
それでも、もう止められなかった。
泣きながら、笑いながら、叫びながら、狂うように寝食を忘れて書き上げたその作品は、
優しい世界とは無縁の、ただの暗闇だった。
彼は優しいから、彼の書く人物はとても丁寧に怒ったり笑ったりする。
どうして、こんな風に書くことができるの、と尋ねた時、彼は頬を掻きながら照れくさそうに微笑んだ。
「想像するんだ、頭の中で全部、自分に置き換えて書く。怒って、泣いて、そうやって書くんだ」
ちょうどその時、読ませてもらったところは主人公が友人と喧嘩して大泣きするシーンだった。
彼の目元は少し強くこすりすぎたようにほんのりと赤くなっていて、それが微笑ましかった。
彼が優しいから、彼の紡ぐ世界は優しいのだと信じて疑わなかった。
私は、きっと、彼にずっと優しい物語だけを書いていて欲しかった。
「僕は君を殺してしまった。だから、もう一緒にはいられない。いていいはずがない」
血を吐くようなそんなことを、彼に言わせてしまうのは誰だったのだろう。
ゆらゆら、ゆらゆら、もう混ぜてはいないのに、紅茶が揺れている。
「昔ね、物書きのことを歪な生き物って言った子がいたんです」
私は気づけば、そんな風に口を開いていた。
夏休み明け、カーテンの揺れる教室。原稿用紙を手にした同級生の後ろ姿。
しんとした教室で彼が読み上げた言葉たち。
「なぜなら、彼らは作り上げたその世界を、登場人物たちを、誰よりも愛しているのに、誰よりも残酷に踏みにじるから。そして、そのことにほんの少しでも傷つき、苦しまないと書くことはできないから。登場人物を傷つけても、何も感じないのであれば、その苦しみは無意味なものでしかないから」
でも、なら苦しんでまでどうして書くのかと、その彼は言った。
そっと手を伸ばして、もう冷めてしまった紅茶をすべて飲み干す。
彼のコーヒーもきっともう冷めてしまっているのだろう。
ソーサーの上にカップを戻す。陶器同士がぶつかる小さな音。
それでも、もう波紋は生まれない。
「泣き、ましたか?」
「え……?」
「たくさん、泣いて苦しんだんですか?」
誰かが言っていた。
作者が残酷であればあるほど、物語に生きる者たちが悩んで苦しめば苦しむほど、物語は輝きを増す。
葛藤の果てに、彼らが何を掴むのか、人はそこにきっとどうしようもなく惹かれる。
でも、私は思うんだ。
「あなたは優しいから、きっとたくさん泣いたんでしょう?」
「…………泣いたよ、当たり前じゃないか」
「私が死んで悲しかったですか」
息を呑んで私を見つめるその瞳は、見ているこちらが苦しくなるくらいに傷ついていた。
ゆらゆら、ゆらゆら、黒い瞳が揺れている。
「ごめんなさい、聞き方がとても意地悪でした」
作者が残酷なほど作品が美しくなると誰かが言った。
でも、私は思うのだ。
きっと作者が優しければ優しいほど、そしてそんな彼が誰より残酷になろうとした時にこそ、紡がれる物語が最も美しい。
その残酷さの惨状を振り返って、傷つくことができる人、その落差を知ることができる人が書く絶望。
そう、彼の書いた物語は美しいほどの絶望だった。
「でも、これが最後なら、どうか嘘だけはつかないで」
その美しさの中でなら、息もできずに死んでしまっても悠然と微笑むことができるような、そんな物語。
彼の瞳が私を映して、歪む。
「あなたはもう私の死を“乗り越えてしまった”から、私といられないと思うのでしょう?」
沈黙が、答えだった。
「……僕はとても不器用だ。口にしてしまったらもう書けない。口にできないから書くことができる」
しばらくして彼は私を見て、そう口を開いた。
「叫びたい時に、口を閉ざす。そうして、今まで作品を書いてきた。叫びたくて仕方のないことをぶつけるべき場所を僕は知っていたから。でも、それは温かいものであるべきだと思ってきた」
言葉は挟まない。
「誰かに伝えたい、柔らかくて脆いものを描きたいと思ってきたし、描いてきたつもりだった。でも、きっと、それは僕が一番叫びたいものじゃなかった。僕はきっと、綺麗なものだけで作品を書いていたかった。優しくて愛しいものしかない、そんな世界が欲しかった……でも、本当は」
くしゃりと苦しげ顔を歪ませて、けれど、彼はどこか安堵したように囁いた。
「全部、壊してみたかったのかもしれない」
「……」
「大切なものをみんな、壊して、その先に何があるのか、見てみたかったのかもしれない」
「見え、たんですね」
重ねた言葉に、彼はそっと目を閉じた。
「うん。いま書けるすべてを全部、書いた」
からん、ころん、とドアベルが鳴る。誰かが喫茶店から出て行った。
それでも、店内は何もきっと変わらない。
じわりと熱くなった目を耐え切れずに覆った。
「わかってます。読み、ましたから」
彼の作品が好きだった。
優しくて、愛おしくて、柔らかくて、儚げで、そんな世界が大好きだった。
でも、小さな悲しいことも、少し泣いてしまうようなことも、確かにそこにはあった。
誰かから見たら、きっと本当に小さなこと。
でも、その人にとってはとても悲しいこと。
彼はそれをとても優しく、弱さまで愛おしく書いた。
私は、彼の作品が優しい世界だったから好きになったんじゃない。
彼の物語の誰もが最後に、ちゃんと前を見て笑うから好きだった。
悲しくても、淋しくても、泣きながらでも、微笑むから、前を向くから好きだったのだ。
彼が書き上げたのは、愛する人を失う物語だった。
残酷で、引き裂かれるような悲しい物語だった。
でも、最後に主人公は前を向くのだ。
泣きながら、それでも。
救いのない物語だったら、主人公が絶望するだけの物語だったら私は悲しかった。
彼の物語が死んでしまうようで悲しかった。
だから、良かった。
例え―――――
それが私を失った世界を彼が受け入れてしまったということの証明であっても。
「私、登場人物の心情を読むのって苦手なんです」
それはいつかの答え合わせ。
私を見つめる彼の瞳に微笑む。
「この時、この人がどう思っているかなんてわかった気になるの、なんだかとても心苦しくて。君の悲しみを少しでもわかりたいって台詞も嫌いです。だって、そんなことを言うのは私の悲しみをこれっぽっちもわかってないってことに他ならないから。本当にわかっているなら、こんなに苦しい思いは絶対にしたくなって思うから」
零れ落ちていく言葉たちは、きっとこれが最後だから。
物書きという生き物に私が問うてみたかった、投げかけてみたかったことだから。
「でも、そんなことじゃないんです。私が本当に聞きたかったことは、」
躊躇った一瞬に彼がそっと音のない透明な微笑みを返した。
促すような頷きに、ぎゅっと掌を握りしめる。
「これからも、それでも、苦しくても、そんなに心をすり減らしてでもっ……書くんですか!」
優しい彼はきっと、残酷になんてなり切れず、書き続ける。
彼自身が傷つきながら書くことが、彼の作品をより美しくするから。でも、それはなんて苦しい道だろう。
彼の作品が好きだった。好きだった。好きだった。ただ、好きだった。
でも、私が守りたかったのは、作家の彼でなく、だた私の愛する人だった。
「――――――ごめん」
ひぅと息を吸い込む。喉が熱かった。
「ごめん」
「どうしてっ……」
「ごめん」
「どうしてですか……!」
いくつも涙が落ちていく。
「自分でもわからない」
彼は困ったように、目を細めた。
「でも、わからないから書くことは止められない」
「ならわかったら、もう書かないんですか!」
今度こそ、彼は困ったように切なげに瞳を揺らした。
でも、瞬きの間にその表情は掻き消えた。
凛とした芯の強い瞳に、晒されて、私はやっとわかった。
「それでも好きなんだ、書くことが。だから、僕は生きている限り、」
「書くんですね」
答えはやっぱりない。
でも、その全てを受け入れたような声のない微笑みで全てわかった。
「なら、私は、私を殺したあなたを許さない」
泣きながら、私は笑った。
驚いたように目を見開く彼から目を逸らさずに精一杯、笑う。
「私を勝手に作品の中で殺したくせに、1人で立ち直ったあなたを、私は許さない。辛くても、苦しくても、私を殺したことを忘れないで、悔やみ続けて、自分を責め続けて、優しいまま、残酷な物語を書き続けてください」
悩みながら、苦しみながら、それでも書き続けることの悲しみなんて私にはきっとわからない。
それでも、彼が作品の中の殺戮に慣れてしまわないように、死をただ作品を高尚なものにするためだけの手段にしてしまわないように、彼が作品の中で無慈悲な神様にならないように、彼が書き続けると言うのなら、私は彼に呪いをかけよう。
もしかしたら、心まで残酷になり切ってしまった方がいい作品が書けるのかもしれない。楽なのかもしれない。
それでも、苦しみが作品を研ぎ澄ますというのなら、彼の優しい物語を殺さないためには、
「私があなたの前から消えても、もう二度と会わなくても、あなたの中で私が死者になってしまったとしても、私が作品を読むことを忘れないでください。私がどこかで必ずあなたの作品を読むと思って書き続けてください」
涙は止まらない。それでも、必死に笑う。
「一生かけて私に償い続けてください、私を殺したことはしょうがなかったのだと私に納得させてください。独りよがりで残酷なだけの物語を書くことなんて私が絶対に許さない。優しくあることを諦めないで、苦しみながら、もがき続けて」
彼の瞳から、涙が零れ落ちる。
それは瞬く間にいくつもいくつも、呆然とした顔の上を滑り落ちていく。
もう、彼の優しい手に触れることはきっとない。
「私はもう死んだから、もうあなたは私に何も言うことはできないんです」
だから、と私は微笑む。
「だから、あなたは作品を書き続けるしかないんです」
彼は、ただただ涙を零して、
それから、救われたように小さく微笑んだ。
私の彼は、小説家だった。
優しくて、残酷な、小説家だった。