就職
私は都から離れた国境にほど近い街に流れ着いていた。その地で、私は女剣士として、そこの領主の娘の護衛となることができた。
私は普段は侍女の姿でお嬢様の傍にお仕えしていた。もちろん、普通の侍女とは違い、常に剣を携帯していた。
都では女剣士という存在は珍しくもなかったが、この辺境の地では珍しい存在だった。はじめのうちは、私が男であることが露見してしまうのではないかと不安だったが、女剣士という存在自体が珍しかったために、私の女性としては少々不思議な言動も、あっさり受け入れられていた。
そんなわけで、私は護衛という侍女として、平穏な毎日を送っていた。
侍女たちの話はとりとめがなく、話題があちこちに飛ぶ。会話するという行為をを楽しんでいるようにみえた。ころころと変わる話題を把握するのは大変だったが、慣れてしまえば苦にならなくなった。
彼女たちのとりとめのない話は、一見くだらなく、得るものが全くないように思えるが、注意して聞いていると、そこかしこにいろいろな情報が織り交ぜられていた。会話すること自体を楽しみながらも、情報のやり取りをしているのだ。
彼女たちの情報のおかげで、私はいろいろなことを知ることができた。それこそ、領主の好きな食べ物から、街の肉屋の飼ってる鳥の名前まで、様々なことを知ることができた。
これらの情報のおかげで、私は地雷を踏まずに、上手くここに馴染むことができたと言っても過言ではない。