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霊獣
私は城を抜け出すと、月明かりを頼りに小走りに進んだ。
私がいなくなったことに気がつかれる前に、少しでも距離を稼いでおきたかった。
どれくらい歩いただろうか。足元--膝の辺りに何か柔らかいものが触れた。私ではない息づかいを感じる。
立ち止まると、脚に何かがからみついてきた。みてみると、そこにはオオカミのようでキツネのような太い尾を持つ獣がいる。
そうだった。この獣は我が一族に伝わる霊獣だった。この獣は私が産まれたときに共に産まれた、言わば私の霊獣なのだ。
「お前も来るか?」
私は撫でてやりながら問いかける。霊獣は答えるようにクーンと鼻をならした。私が手をはなすと、霊獣はぐぅっと伸びをした。霊獣の身体が一回り大きくなる。
霊獣は私を背に乗せると、森の中を駆け出した