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女装王子  作者: 岸野果絵
女装王子
3/30

 夜、私は荷造りをしながら、城内が寝静まるのを待っていた。と、部屋の扉を誰かがノックした。私は慌てて荷物を隠すと、何食わぬ顔で扉を開けた。

 母が立っていた。私はドキリとしたが、平静を装って母を招き入れた。

 母は単刀直入に、城を出ていくつもりなのか、と尋ねてきた。私は即座に否定しようと口を開いた。が、母の真剣なまなざしに気おされて口ごもってしまった。

 そうだった。失念していた。母は口先で騙されるような女ではない。私のウソなどすぐに見抜いてしまうだろう。

 私は意を決して、出ていくつもりだ、と答えた。

 母の表情がふっと和らいだ。

「そなたのしたいようにしなさい」

私は耳を疑った。てっきり母に反対されると思っていたのだ。

そんな私の戸惑いに気付いたのか、母は続けた。

「私は私の好きなように生きることが叶わなかった。そなたは自分のおもう通りに生きなさい」

母は立ち上がると、私を鏡台の前に座らせた。

「私がそなたにしてやれることは……。きちんと覚えるのですよ」

そう言いながら、私の顔に化粧を施しはじめた。母は下地とファンデーションを塗った後は片側だけ化粧をしてくれた。 反対側は、見よう見まねで自分でやった。なかなか思うようにラインがひけず、悪戦苦闘したが、なんとか頑張った。


「似合うわ」

仕上げにウイッグをつけた。 母に促されるまま着替えた。そして少し赤みがかった簡易な皮鎧も身に着けた。

「やっぱり、私の若い頃のがぴったりだわ」

 こんなに楽しそうな母を見るのは初めてだった。もしかしたら母は娘がほしかったのかもしれない。

「これで、もう誰もそなただとは気がつかないわ」

確かに鏡の中には少女がいた。どこから見ても女の子にしか見えない。 自分で言うのもなんだが、なかなか可愛かった。

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