表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女装王子  作者: 岸野果絵
宿命
26/30

新しい生命

穏やかな日々は続いた。


妻が身籠った。

この喜びをどう表現したらいいのだろう。

私の子が生まれるのだ。

新しい家族ができるのだ。

これで私は本当の意味で、この家の人間、この村の人間になれるのだ。


妻に滋養の良いものを食べさせなくてはならない。

生まれてくる子のために、いろいろ揃えなくてはならない。

私は仕事に励んだ。


村の衆も喜んでくれ、なんやかやと気遣って差し入れなどをしてくれた。

入用のものがたくさんあるだろうと、次の定期便のメンバーに私を加えてくれた。

私は妻や義母はもちろん、村のおかみさんたちのアドバイスを参考にして、買い物リストを作り、定期便の出立日に備えた。



街の様子は、どことなく沈んでいた。

前に来た時は、もっと賑やかに華やいでいたはずだ。

それだけではなかった。

物価が異様に上がっていたのだ。

予備の資金を使っても間に合わないくらいの高騰ぶりだった。


宿で仲間たちと資金の算段をしていると、役所に行っていた仲間が飛び込んできた。

「戦のせいで物資が滞っているらしい」

私はそれを聞くや否や、宿を飛び出していた。


戦の話は本当だった。

最近台頭してきた大国がこの国を手に入れようと、戦を仕掛けてきているらしい。

大国の圧倒的な強さに、この国が呑み込まれるのも時間の問題のようだった。


この国がなくなる。

私には関係ないことだ。

この国が滅亡したとしても、国の名前が変わるだけなのだ。

山奥の集落の生活への影響など、実に微々たるものなのだ。

私には一切関係のないことなのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ