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吹雪
山を少し下ると。細い山道に一人の老人がうずくまっていた。
どうやら腰を痛めたようだ。
私は老人に手を貸して立ち上がらせようとしたが、老人は苦痛に顔を歪めながらうめくだけだった。
雪はだんだんと強くなってくる。
吹雪になりそうな気配だ。
私は老人を霊獣に乗せ、家まで送り届けることにした。
老人の家は山奥の小さな集落にあった。
家には老婆と娘がいただけだった。
しかたがないので、私は老人を担ぎ、家の奥へと運んだ。
私は老人を寝かせると、老婆のお礼に適当に相槌をうちながら、玄関へと向った。
私には長居をするつもりは全くなかった。
一刻も早く、南へと向かうつもりだった。
私は玄関の扉を開けた。
うなりと共に雪風がなだれ込んできた。
視界が一瞬のうちに真っ白になる。
猛吹雪だ。
私は慌てて、ありったけの力を込めて扉を閉めた。
ふと足元をみると、霊獣は私に尻を向け伏せていた。
霊獣も外に出る気はないようだった。
無理もない。
いくら霊獣といえども、この猛吹雪の中を移動するのは困難だ。
私は老婆と娘の勧めにしたがい、吹雪が落ち着くまで、その家に留まることにした。




