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扉の前にて
第二王子は寝室の扉の前に立っていた。
今日は第二王子とお嬢様の婚礼だったのだ。
豪華な花嫁衣装を身にまとったお嬢様はとても美しかったが、その表情はうつろだった。
お嬢様の瞳は何も映していないようだった。
第二王子の姿すら映していなかった。
第二王子はわかっていた。
館でのお嬢様の様子を考えれば、こうなるであろうことは簡単に推測できたのだ。
第二王子は何もかも承知で、この縁談をすすめたのだ。
それでも、いざ、こうなってみると、辛かった。
あの日、お嬢様はとても楽しそうに兄と霊獣の話をしていた。
もう二度とあの笑顔を見ることはできないかもしれない。
第二王子は大きく息を吐くと、扉に手をかけた。




