第二王子の誤算
祝いの言葉を述べられ、第二王子は首をひねった。
「お隠しめさるな。城内は噂で持ちきりですぞ」
相手は第二王子がとぼけていると勘違いしたようだ。
昨日から何度か同じようなことがあった。
一体何のことなのだろうか。
「え?側室をお迎えになられるというお話が……」
第二王子は耳を疑った。
側室だと?
全く身に覚えがない。
事の真相を確かめねばならない。
第二王子は早足で自室に向かった。
途中で副隊長の出くわした。
「そなた、側室の件について何か知らぬか?」
「はいっ。すでに使者は出立しております。今頃は先方に到着している頃合いかと」
第二王子の問いに、副隊長は誇らしげに答えた。
「先方とは誰だっ」
第二王子の剣幕に副隊長は戸惑いながらも説明をはじめた。
話を聞きながら、第二王子は頭をかかえた。
迂闊だった。
数日前、副隊長に何か言われた記憶は、あるにはある。
だがその時、第二王子は政務のことで頭がいっぱいで、適当に返事をしただけなのだ。
まさかこんな話になってるとは、想像すらしてなかったのだ。
使者はすでに館に到着しているようだ。
今さら反故にすることはできない。
そんなことをすれば、お嬢様の体面にキズがついてしまう。
先方が断ってくるのならば、それでいい。
だが。
第二王子はお嬢様の姿を思い出した。
領主は一も二もなく承諾するであろう。
あの可憐なお嬢様には、それを突っぱねることなどできようはずもない。
もう取り返しはつかないのだ。
「わかった。だが側室ではない。正室として迎える」
「えっ。それにはご身分が」
慌てふためく副隊長に、第二王子は声を荒げた。
「そんなものはどうとでもなる」
第二王子は父王のもとに向かった。




