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近衛副隊長
近衛副隊長は悩んでいた。
このままにしてよいのだろうか。
誰にも知られたくない。あの出来事だけは絶対に知られたくはない。王太子の言う通り忘れてしまうのが、副隊長にとっては一番都合のいいことなのだ。
しかし、本当にそれでいいのだろうか。一個人の私的な感情だけで判断してしまってもいいのだろうか。
第二王子には君主の資質がある。学問も武芸も抜きんでている。このまま王太子が戻ってこなくても心配するようなことは何もない。王太子よりも第二王子が即位することを望む者もたくさんいるのだ。
だが、副隊長は気がついていた。副隊長は自分が真面目で融通が利かない性格だと自覚している。この性分のために、何度も痛い目にあってきた。だからこそわかるのだ。
第二王子はまっすぐすぎる。物事をストレートにとらえすぎるのだ。
あの出来事のときに痛感した。王太子は穏やかな雰囲気をかもしながら、周りをじっくりと観察しているのだ。あの観察力は第二王子にはない。
そうなのだ。この国には、どちらか一方ではなく、両方がいなければなならないのだ。
副隊長は立ち上がると、第二王子の元へと向かった。




