第二王子
「兄上の消息はまだ分からぬのか」
「申し訳ございません」
第二王子は大きなため息をついた。兄が姿を消してから既に数ヶ月がたっていた。父王との約束の期限が目前に迫っている。残された時間はわずかだ。
何としても兄に帰ってきてほしかった。将来、兄が即位し、自分が補佐をするというこを、ずっと当然のことだと思っていた。
第二王子は自分が率先して動きたい性分なのだ。国王ともなれば、おいそれと自ら動くことはなかなかできない。軽い思いつきで発言したことが、鶴の一声となってしまう可能性があるのだ。
朝議でもそうだ。以前ならば、兄がいた時ならば、第二王子は自分の意見を忌憚なく発言することができた。
だが今は違う。周囲は第二王子が次期国王だと思いはじめていた。第二王子は軽い思いつきで発言することができなくなったしまったのだ。
第二王子は、今まで、朝議での兄の態度に不満があった。兄はほとんど意見を言わない。意見を求められても、いつも明言を避けていた。第二王子は、そんな兄を不甲斐なく思うこともしばしばあった。だが、今こうして自分が同じ立場になってみると、兄の苦労が身に染みるのだった。




