苦悩
私は夢の中で国王の息子だった。
私の母は先王の娘で、父はいわゆる婿養子だった。父には母以外にも妻が数人いた。まぁ、それは特別なことではなく、当たり前の風習だった。
父の第一子であり、先王の娘の子供だった私は、生まれたときから次の国王になると決められていた。だが、私は生来小柄で線が細く、武芸は得意ではなかった。かといって、勉学の方もいまいちパッとしない。私は何の取り柄もない凡人だった。
私には半年違いの異母弟がいた。弟は体格もよく、武芸に秀でていた。
私は弟と直接手合わせしたことはない。手合わせしたら確実に負けるので、周囲が手合わせを勧めないということに、私は気づいていた。が、私は争いごとを好まなかったし、悔しいとも思わないくらいの実力差を感じていた。
弟は物覚えもよく勉学でも私は勝てなかった。
弟は私を不思議なくらい兄としてたて、慕ってくれていた。
容姿、知能、体力、そして器量。私は全てにおいて弟に劣っていた。
そんな私を不甲斐なく思うらしく、父をはじめ重臣たちはことあるごとに私に発破をかけた。私はそんな日常にうんざりしていた。
父の跡は弟が継ぐべきなのだ。なぜ私は生まれてきてしまったのだろうか