医務室
なし
氣が付くと、体育館の雨を打つ砂利、犬走りに寝ていた
どのくらい寝ていたのだろう、遠くからざわめきが
それが、すぐ脇の体育館の外扉の中だとわかるまで数分
いやもっと短かったのか、ざわめきが大きく聞こえる外扉を開ける
まぶしい始まるところだったらしい、扉を閉めてそこに佇む
というか氣を取り戻す、なんちゅう人の多さやねん
演台で挨拶が始まったらしいところで、急速に馬鹿らしくなってきた
そして体育館裏手にちゅうこーでもあるまいしたばこを吸いに行った自分
そしてなんかわからんけどラリアットをくらう自分が情けなくなってきた
自分に嫌氣がさし、部屋に戻るべく入り口に向かう。
演台の挨拶は続いている。
そして、そこに例によって学生課よしおが待ちかまえている
そういやこいつもよっしーーーかとふと思いつつ
「ちょっと頭がいたくて」よしおに言う。
確かに倒れただけあって顔が青かったのだろう、何も言われず行ってよしの片手ふり。
普通は医務室行くかとかもうちょっと心配するだろう。
まるっきり生徒指導部の構え、こいつは氣概なしと思われたか。まあいつものことだ
部屋に戻る
後ろから、なにかアトラクションかゲームが始まったのか
大きな歓声がする。やっぱり学部対抗バスケ大会で当たりか。
俺がいなくて、文学部は損したな。
捨てぜりふを吐き、重い頭を揺すりながら、なぜか笑いがこみ上げてくる。
今までにない人混み、そしてバスでの疲れもあって
横になったとたん眠ってしまったらしい
ふと氣がつくと、時計は午前2時。
ここはどこだ。一瞬。どこにいるのかわからなったが
鉛色の病院のような天井を見て、合宿に来ていたことを思い出した
せめて外観がきれいなんだからもうっちょっとましな内壁にすればいいものを。
くだをまいていると、いつの間に毛布がかかっていたことに氣づいた。
どんぐりがかけてくれたらしい。氣遣いの男か
ジャージに着替えてベッドに入る。ドングリは仏様のように安らかに眠っている
デブはいびき、この偏見も崩れた。
しかし無音の中、少し眠れず今日の出来事を反復する
なぜラリアットなのかそこが一番だ。いろいろ考えるが答えが見つからない
このまま眠れないか、羊でも数えるかと思っていたら寝てしまったらしい。
カーテン越しのやわらかい日差しで目覚める
嘘ではない純な鳥の声が、まぶしい
もう片側のベット、どんぐりはいない。逃げ帰ったか。
カーテンを開ける。新緑になりかけた木々の新芽がまぶしい
窓からは見渡す限り森しか見えない、森の合間に建物が見え
それらをつなぐ廊下が延びている、森にあって調和がとれている
なんと広い合宿所だ
昨日はわからなかったが、大きな山が正面に見える。ここはその中腹だったのか
静かに椅子に座り、朝のすがすがしさを味わう
海辺のあの街もすがすがしさもあるが、やはり広大な森林にはかなわない
コーヒーがあればいいな
しかたない買いにいくかと思っていると、白いスマートな帽子が入ってきた
部屋の間違いだと言いかけてそれがどんぐりだったことに氣づいた。
なんとも洒落た格好をしている、実は良家の子息か
格好を褒めると笑いながら、量販店のジャージだとのたまう時代は変わったか
そういやいつも体育は、小豆色の高ジャー、寝間着のジャージも
お袋が買ってくれたまあ普通のやつ自分に合っているかはわからないが悪くもない
何処に行ってたか尋ねるとジョギングしていたらしい。見ればジャージが汗ばんでいる
動けるデブか。またもや偏見はくずれた。
どのくらい走ったのか聞くと、3,40分くらいだそうだ。いつもより少ないとが普通と
のたまう。ハーフマラソンに前から挑戦しているらしい
なんじゃそりゃあ。
恐るべし、爽やかとしか言えない健康的デブ
繰り返すがデブの範疇を超えている、超人デブか
手に何か持っている、青い缶、コーヒーだ
無言で私に投げてくる、さすがとしか言えない
温かいのがよかったがこのさい贅沢は言えまい
飲みながら、どんぐりからここらの自然の素晴らしさを聞く
嫌みに言わないのが氣にいった、自分も走ったような錯覚
やってみようかとも思ったがタバコ吸いにはまあ無理だろう。
なし