ラリアット
なし
よくあれだけ食べれるな。というほど食べ、
私が遠慮したポテトもたいらげ
「テレビで野球を観てくる」
どんぐりはそう言ってどこかに消えた
私も煙草が吸いたくなったが、歩もうとして
館内禁煙の中、果たして吸えるかと考え、おっくうになった
バスではなんとなく沈んだ心だったので我慢できたが
いよいよ禁煙か。
禁煙は高3の追い込み以来か
なにはともあれ体育館の裏手でも行ってみるか
どうせ集合場所だしという軽い氣持ちで出かけた。
「よっしーーー」何を言っているのかと思った。
なぜ、わしの名、吉岡純の名字を呼ぶ。
ていうか人違いに間違いはないけど。
しかしまあ、こんな体育館裏手で誰かを呼ぶ。
逢い引きか(ふるっ)
ここらの周りは、背の低い街路灯はあるが
いかんせん灯りは暗い、いやかなり暗いと思う。
はじめは、勘違いしているのだと思った。
こちらは、煙草を吸おうと思ったらまさかのオイル切れ
なんでやねん。自分で自分にどつく
というか、呼んでるのだれえってかんじ
まさに、任侠映画の「おんどりゃ。どたま かちわるぞ。」的状況。
よくわからないが、犬走りのはるか向こうでまだしつこく呼んでいる。
「よっしーーー」携帯で呼び出せよ。今の世の中だぜ。
あるいは逆に呼び出されたか。しかしこの闇におそれをなし、
呼んだはいいがこちらにはこない。ざまあみろ。
誰に言っているかもわからないが。鼻で笑ったその時、悪魔はやってきた。
さっきの食堂の女。
ガシーーーーーン。
何かが当たったのか、倒れそうになる。いや倒れていく。
あの小柄な女。なんであなたがここにいるのという感じでなんでラリアットなの。
おまえだったか、ありがちな刑事ドラマの最後のように消えゆく意識でそう思った。
そして片隅にあの湖畔の女性がいた。
なし