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野バラ

なし

夏の入道雲 

そして、うだるような猛暑がさり

残暑とよばれるけだるい暑さが続き、季節は秋になろうとしていた

その日、いつもどおりに彼女は登校した

残暑ながらも過ごしやすい季節になってきた

朝、いつものようにグッドモーニングと言って教室に入室するが

その日に限って彼女の周りには友だちが来なかった

軽い違和感を感じながらもいつも通りに授業をうけた

しかし、休み時間は2、3人の子が話に来てくれて

自分の心配は杞憂かと思った。

ところが朝は次の日も同じであった

そして、とうとう休み時間、誰も話しかけてこなくなった

こちらから話にゆくとなんとなくさけられている感じがした

ある日の音楽の時間

「わらべは~みいたあり~のなかのばあらあ~」

歌を歌い終え、みんなが教室を出ていった後

オハラは女教師に呼び止められた

音楽教師は若い臨時の先生で外国での留学経験があるらしく

なぜかとても氣さくな女の先生だった

何度か彼女と話をしたことがあったが呼び止められたのは、はじめてだった

彼女は誰もいなくなるとこう言った

「野バラよ」「野バラには氣をつけなさい」

その事をつたえると何事もなかったように彼女は準備室に去った

まだ、その意味が彼女にはわからなかった

あいもかわらずの毎日だったが、オハラは学校に休まず登校した

そして、休みをはさんで次の週。オハラが転入してからずっと

空いていた席に人だかりができていた

いつものようにオハラが転入してからずっと欠かさずしてきた挨拶。

誰も返す者がいなくてもする挨拶

グッドモーニングと言って教室に入る

人だかりの中心人物。小柄な女性がオハラに駆け寄ってくる

グッドモーニング。

ニコッと笑う笑顔が人なつっこい

オハラは思わず泣きそうになってしまった

何日ぶりに、挨拶をしてもらったのだろう。思わずハグをする

その瞬間教室の空氣が止まった。

その異様な雰囲気にすぐにぴーんとくるものがあったらしい

髪の毛ぼさぼさの彼女は窓際に佇む一人の生徒に向かう

それは学級でいつも上品で優雅な感じを漂わせ

みんなが百合様と呼ぶ女性であった

「また、おめえ、やっちょるのか」

一瞬なんのことだかわからなかった

百合様は、優雅に笑うだけであった。

タイミングを合わすかのように爽やかなチャイムがなり

廊下から生徒が走ってくる。担任が来るのであろう

百合様のまわりを囲むような輪が自然にくずれる

しばらくすると、なぜか臨時音楽教師が入ってきた

何事だろうか

「はーい席について」とても元氣がいい明るい女性だ

「あらっ、戻ってたのね。」そういって例の助けてくれた女の子と

握手する自然な感じ

「おはよう。担任は急な出張で出かけてるので私が来ました」

あいかわらず明るい。担任の出張がこうもうれしい人もいるまい

何氣をよそおって窓側の百合様を見る

知らなかった・・・

優雅であるはずの彼女がひどく憎々しい顔をしている

やはりそうとうくやしかったのだろう

彼女が俗に言う裏ボスだったのだろう。まったくわからなかった

それにしても、女教師の明るいこと、私の事をわかっているような

はしゃぎようだ。この人も道化だ

聞けばボーイシュの彼女は下町に長く続く花火師の家に生まれ

あの界隈の元締めをしているらしい。元締めが何かはあとで母に教わった。

そして、夏から秋の始めまで全国を花火巡業し、帰ってきたらしい

もちろん高校には大将自らお願いにあがり。

下町、江戸っ子魂にフランスの友愛を重ねたシスターはいたく氣にいったらしい

また、休むことについても後で、補習を受けることを条件に

2学期始めの2週間休むことを許可しているらしい。

しかしながら、そんな彼女も男手一つで育てられ

物心ついた時には、お母さんは、体が弱く亡くなってしまったそうだ

まったく彼女と、彼女の育った環境はここでは正反対であるが

彼女のお母さんがここの出身ということで彼女は自ら決心して入学したらしい

おやじに言わせれば、

「死んだものに遠慮するこたあない。おまえはおまえなんだから

 好きに生きるがよい」と何度も何度も諭したらしいが

父親譲りの一度こうと決めたら貫く性質

勝手に試験を受けて入学してしまったらしい。まあ彼女らしい


なし

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