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第七話「登校」

 学校までの道のりを並んで歩き出した俺と清美。


 清美は俺に一方的に話しかけてきた。何もかも忘れてしまった亮(俺)に対して、学校のことなどをいろいろ教えてくれた。

 清美の話によると、亮や清美が通う高校は前期後期の二学期制なので、冬休みが終わった次の日である初日の今日から、いきなり授業が一日中あるとのことだった。それを聞いた俺は(初日から授業六時間はさすがにちょっときついなぁ)と、少し憂鬱になった。

 そんなことよりもさらに俺を憂鬱にしたのは『小宮山亮』としての学校生活だ。何を今さらって感じだが、着実に一歩一歩、学校へと向かっていることを考えると、不安は増した。

 自分は全く相手のことを知らないのに、相手は自分のことを知っているという、変な状況になることが目に見えている。今朝、家を出るときまでは、なんとかなるだろうと軽いノリだったが、今になって緊張してきているのが自分でもわかった。

「亮?」

「えっ」

突然、名前を呼ばれて清美のほうを向く。

「ちょっとさっきから全然、人の話聞いてなかったでしょ?」

「ああ、ごめん」

思えば清美は、ずっとさっきから一人で俺に話しかけていたような気がする。だけど俺は、そんな清美の話に適当に相づちをうつだけだった。


 そうこうしてる間に学校へと着いてしまっていた。家から歩いて十五分程度の距離だろうか。もっと遠いのかと思っていたが、意外にもかなり近かった。途中にある商店街を抜けるとすぐにその高校はあった。


 学校に到着すると、俺は清美に案内されて職員室へと向かった。

 まるで転校生のような気分になっている俺は、期待と不安が入り乱れる複雑な心境で、職員室へと足を踏み入れる。

 先に入っていった清美が「永瀬先生」と、ある教師に声をかけた。どうやらこの人が亮の担任らしい。

「あー、小宮山くん。元気そうじゃない」

彼女は俺の顔を見るなり、そう言った。

「話はお母さんから聞いたわ。大変だったみたいね。いろいろと」

「ええ、まあ……」

『永瀬先生』は、まだ二十代だろうか。そんなに年がいっているようには見えないななどと、どうでもいいことを考えた。

「覚えてないって、ほんと?」

「……はい」

「そう。クラスのみんなには一応、このことは知らせておく必要があるから、朝のホームルームで言うつもりだけどいい?」

「はい。それは言っといてもらわないと困るんで……」

「うん、そうよね。じゃあ、いろいろこれからも大変だと思うけど、気楽に頑張ってね」

明らかな作り笑顔を浮かべながら彼女はそう言い終えると、今度は清美に俺を教室まで案内するようにと促した。


 教室に着くと清美は、「亮の席は窓際の一番後ろから二番目だから」と言い残し、自分はさっさと教室へと入って行ってしまった。一緒に教室に入るのが嫌だったのか何なのか知らないが、このとき初めて、清美が同じクラスだということに気づいた。

 一人廊下に取り残された俺は、教室に入るタイミングを逃してしまったようだ。朝のHRが始まる時刻が迫っているせいか、もうすでに教室にはクラスメイトのほとんどがそろっているるはずだ。なんだか入りづらい……。

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