血縁者と考え事
そのあと、私は急いで教室に戻った。
席についてすぐに次の準備をして待つ。
「ふぅー…」
ま、間に合った~
と心の中で心底安堵し、一息つく。
いつも彼と関わると授業に支障が出るのだ。
というかはっきり言って余裕がない!
そういつもギリギリな私を見てか、
「また、ギリギリじゃん、さっきまでは余裕ありありだったのに、なんかあったのか??」
と、隣に座っている偶然にも私の血縁者である男レオが、怪しげに聞いてくる。
おそらく…また、というのは今回も
もしくは今日も、のどちらかの意味を含ませているのだろう。
…どちらにせよ、怪しまれているのは確か。
なかなか鋭い…!厄介だ…!
と舌打ち気分で、正直に殿下との一件を明かしたくもなるが、
それは言うわけにいかなかった。
そういう事情が私と殿下にはある。
「そうなんだよねー…実はあったんだよ、それが」
…この際、でっち上げちゃえ♪
そう思い至った。
この手のやつは否定すると疑い深くなる。
少し面倒そうにため息をついてレオをうかがった。
「何が?」
やはり興味を持ったようで食いついてきた。
レオは赤髪にしてルビーのように輝く瞳をもっている。その瞳は今、好奇心と探求心でいっぱいだった。
「それがね…」
少しもったいつけながら言葉を繋げ…
さも嫌そうに、
「先輩とさ、廊下先でぶつかっちゃって、お互い持ってた資料が床でごちゃ混ぜ。それをなんとか識別して分けるのに手間取ったんだ。ほんと参ったよ。」
と両手でお手上げポーズ。
…どう?私の現実にありそうでない話は。と自分では傑作のつもり。
「ふーん。
結局誰とぶつかったんだ?」
レオは私の話に生返事で、一番聞かれたくなかったことを聞いてくる。
「…さぁ?知らない人だったよ。お互い急いでたから」
知りたくもない相手だったよ…。
と心で呟き、首をかしげた。
「ふーん。知らない人ねー。
…怪我は?お前ドジだからな~したんじゃないのか??」
彼は私をわざとらしくじろじろと見て言った。
「…!?しないよ!
ぶつかっただけでするわけないじゃん…!」
思わずその言葉に赤面した。
確かに私はドジだし、衝撃があった背中は痛いけど、そんな弱々しくない!
「ふ~ん?そうか?怪しいな。
…それはそれとして油断すんなよ?」
「油断なんていつもしてないよ!」
怒ったように私は語尾を強めて言った。
あーもうっ!!憎らしい、何この態度!
レオのせいで気分を駄目にした。
落ち着かせるために深呼吸して
授業に集中する。
「あ、そう。せいぜい気を付けるんだな」
「わかってるよ、全くもう!いつもそうやって………ッ」
私は授業に頭を切り替えたため、
彼の目が細まったことに気づかなかった。
しかし、授業といっても簡単なものだ。考え事していても出来てしまう。
そう、考え事といえば、
ーーーーーーーーーー殿下のことだ。
何故、私なんかと婚約を結んだのだろう?
私と彼が初めて出会ったのは公式の場ではない。どこぞの貴族が開いた仮面舞踏会である。当然素顔が見えなければ正体などわかるはずもない。
彼とあって彼の指示を背いたら…
あそはとんとん拍子でこうなってしまったのだから。
しかも私を痛めつけて…
ーーホント何がしたいんだか。
考えれば考えるだけ無駄になっているようにしか思えないほど、
殿下の行動は矛盾していたのだった
血縁者レオ!!
新キャラ登場♪さて話がここから展開していきますよー!