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記憶の断片

過去の幼いときの記憶がよみがえる。


映像が流れて、それにひきこまれた。


***


「--お父さま、お母様・・!」


まだ、今の義父とは違う人・・実の父親とくらしてた幼いとき。


二人は私を挟んで繁華街を歩いていた。


「なんだい、リュネ」

「どうしたの?リュネ」


小さい私は、嫌な予感がしていた。

渦を巻いて、胸が痛くて、苦しくてー・・。


優しい瞳で私を覗き込む父と、母。

母はこのときは優しくてーー温かくて・・--。


でも小さい私は安心できない。いつも安堵するはずの眼差しに。


「あのねっ、私ーー・・」


私が父や母の服にすがり付いて、この不安を言おうとしたきーー




ーーーー悲劇は起こった。





「ヒヒーーンッ!!」


パカッパカッーーーー!!


馬の足音。


ガタガタガタガタッ!!


馬車の揺れる音。


「暴れ馬だーー!!」


誰かが叫ぶ。


音のする方向を私も父も母も振り向いた。


幼い私の瞳が大きく見開かれる。

嫌な、予感があった。それは最悪の方向に向かっていく。


これ以上ない怖い恐い大きな未知の不安に身体がすくんだ。


馬車と馬は自分達の方向に突進してきた。


「ヒヒィイイイインッ!!」


ズダダダダと、猛烈に突進してくる馬と馬車。


「危ない、ローズ、リュネ!!」


必死な焦った温かい優しい眼差しが奥に在る瞳で、父は私たちを見た。


ドンッ!!


父によって私と母は安全なほうに突き飛ばされた。


「きゃぁっ」


ズテッ


私たちが地面に突き当たったちょうどそのとき、


「ヒヒィイイインッ」


ドカッ、ズルッ”!!キィイイイイイイ!!


耳元で嫌な音が炸裂した。

蹴る音、引きずる音、馬車の止まる音ーー。


そして、小さい私は直視していた。


その惨状を、悲劇を、父が、死に行く様を。


「いやぁああああ”いやよいやよいやぁショウヤ、ショウヤァアアアアア”!!」


母が父の名を叫び、悲鳴を上げる。


これだ、嫌な予感は。

恐くて不安で胸が苦しくて。


「っ”-っっ”!!」


息が止まった。

小さい私には、もうどうしようもない出来事だった。


血に濡れた繁華街。

それも、父の。


暴れ馬の馬車による事故。


父は、守ってくれたのだ、自分の命を犠牲にして。


泣くこともできない、叫ぶこともできない。

一瞬、何があったか理解できなかった。許容オーバーなのだ。


そんな状況下の中、意識が、内側に追いやられた。


傍から見たらきっと、抜け殻のような人になってるだろう。

目はうつろで、母のように泣き叫べずに。



そこで、景色が変わった。


お葬式だ。


「・・---」


無残な身体になった父の身体を、棺に入れ、

花束を添える。


ただ呆然と景色は流れた。


それから、母は変わった。

私も変わった。


優しい目を母は向けない。

私も、母に何も求められなかった。


だから、今までのあのぬくもりは、なんなのか、

どこにいったか、わからなかった。


心に傷を負った母。

私に何の感情も向けなくなった母。


父がいたころのアレは、なんだったのだろう。


不思議のまま、わからないまま、時を経て、


母は今の父を迎え入れた。


「これが、貴方の新しいお父さんよ。」


「オ、トウ、サン」


呆然と呟いて見上げた先には、知らない男の人。

父とは違う、まなざしを向ける人。


なんだろう、わからない。


母の表情も、声も眼差しも変わった。

本当の父にむけたそれじゃない。


私は、父とよばなくなった。

義務的な何か、お互いの利益のために動く関係になった。


そこに、感情はない。


時はさかのぼる。


王族に挨拶しに行ったパーティ。



「これからも愛をはぐくんでくれ」



王のこの言葉が、よくわからなかった。


愛って何?

コレが愛?


愛って、言葉は温かいのに、こんな冷たいものなの?


ワカラナイ。


まだ、あの優しい目を向けてくれた父のあの眼差しは、


愛といえたかもしれないのに。


「リュネ!!リュネッ!!」


声が聞こえた。

一瞬、瞳に彼が映る。


殿下だ。

その、殿下の眼差しが


「ッ”!!」


あのときの優しい温かい

必死な目ーー私を事故から守ってくれた父の目と、



      重 な る 




ー途端、目の前に記憶の断片が早送りされて見え、




ーーーーブツンッ


それが消えたと同時に、意識が、途切れた。



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