疑問
「ぅ・・”」
ズキッ
頭に響く痛み。
思わず、ぱちっと目を開けた。
頭が次第に覚醒していく中で
ぼんやりしている視界が徐々に明らかになっていく。
・・はずだった。
暗い闇に視界が覆われている。
ところどころ灰色の光が差し込んだり消えたりの繰り返し。
ぎゅっと、引き寄せられて暗くなる。
ふさっっと羽毛かなにか服の感触が顔を覆った。
「?」
ふぅっー
息が髪にかかった。
「??」
身体も動かそうとするが動けない。
なにかに抱きしめられていなければ動けるはずだ。
おそるおそる私は上を見上げた。
「・・!」
私の顔面にいたのは、
リクト殿下、だった・・!
私はまじまじと殿下を見つめる。
思わず目を見開くのは当然の反応だろうと静かに思った。
それと同時に何故動けないかを知った。
身体に触れるものに少しでも意識すれば
すぐに、背中に伸ばされている彼の腕と
彼の身体と密着する自身を感じることができた。
目の前には、安堵した顔で眠る彼がいた。
私を抱きこんで私が身じろぎしても起きない。
「・・・」
殿下・・。
私は不思議だった。
私を傷つけて苦しめて
・・そう私をもてあそぶ彼しか見たことがない。
そもそもこれはただのお遊びの婚約関係だ。
私は家や家族を守るために犠牲なった関係であり、
けして望んだものではない。
守るに値するような価値のある家族とは思わないが、
家が危なくなればその矛先は私へと向けられる。
それは、なんとしても避けたい。
彼は思い通りにならない私を
殿下という立場で私をいいなりにして縛りつけようと遊んでる。
だから、こんな状態は本当ならーーない。はずなのだ。
彼が私に口付ける理由も
こうして抱き込むのも、心配されるのも、・・
そうされる理由が見当たらない。
この関係はそういう関係ではない。と言い切れる。
本当に不思議だ。
考えるだけで渦がまいて頭がズキズキと痛む。
彼が、私に何を求めてるのかが、わからない。
でも私は、それがなんであろうと
すべて受け入れる立場 なのはわかっている。
受け入れなければならないのだ。
私の望みではなくとも。
己の意思はそこには通用するほど
甘いものではないのだから。
「・・でん、か。
私に、なぜ、こんなこと、するの、ですか」
私は思わず呟いた。
聞いてないだろうことは分かっている。
でも今まで犠牲にしてきた自分の疑問だけは解き明かしておきたい。
謎のまま従いたくはない。
せめて吹っ切って、諦めて、割り切って、それを受け入れたい。
そういう心の準備や覚悟をしたい。
そんな眼差しでぼんやりと彼を見た。
「・・なぜだって?
それはお前がほしいからだ」
思いもよらぬ言葉が
ぎゅっと、抱きしめられながら、聞こえた。