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偽りか真実か -対等ー

引き続きリクト視点です^

俺がようやく女を切り抜けて、


あいつの姿を・・リュネの姿を見たとき、


すでに彼女は兄ライトと話していた。


時折見せる笑顔。

知的な口調。


だがどこか一線引いったような距離のとり方、視線の向かわせ方。


他の女とは違い、華やかでもなく、気取った風でもなく、初々しくもなく、

一見、おとなしそうな女。存在感のないような女。


しかし、一目見てなぜか、惹かれる存在だった。


そして、本当はどこかで会ったことがあるのではないか

・・と、頭の片隅で考えていた。


一度だけ、・・一度だけ、彼女と似たような女に出会ったことがある。

仮面をつけた舞踏会だ。


もっと今日会って冷たい印象を受けたリュネよりも、

明るく、表情豊かな女だった。

しかし、その身に纏う雰囲気がリュネと重なる。


話してみたが、すぐに俺を第二王子だと見抜かれた。

声色は先ほどのリュネとは異なっていたが、


声質だろうか・・それが似ていた。いや、同じだと、直感がそういっている。


「ライト様って、やさしいのですね。

ライト様は女性に人気があるのでは?」


彼女らに近づくたびに、会話がはっきりと耳に入てくる。


もし本当に、一度会った女がリュネならば、

どちらの態度が、言葉が本性なのだろうか?


そう考えながらも、会話に集中する。


「いや、そんなことはないよ。

僕なんかに好意を持ってくれる人なんて数少ないさ」


彼女が質問すれば、兄は優雅に答える。

近くで見ても遠くから見ても、仲睦まじくみえるだろう。


「ライト様、謙遜しすぎでは?

今日もライト様にダンスを誘う人が絶えなかったのは周知の事実ですし

こうやって、話をしていただいてる私の身にも嫉妬の視線が飛び交ってますよ」


「そうかな?

まぁ、僕は第一王子だからね、誘われても仕方ないんじゃないかな。

社交辞令だよ。僕としては・・

僕が好意を持ってほしい人に、誘われたいものだね」


仮面をかぶったほうの女が本性なのか、

今のリュネが偽りなのか・・。


「たとえば・・誰です?」


冗談めいた笑みで彼女が聞く。


「君とか?」


半分本気そうに兄が答えた。

彼女は一体どう答えるのか・・・。


俺も気になって、気配を潜める。

しかし、聞きたくないようなそんな気持ちになった。


だが、まだ話しに割って入るタイミングではない気もした。

ここはぐっと我慢する。



「冗談が上手なのですね。

ライト様を皆が嫌うはずないと思いますが」


やはりそうきたか・・みたいな顔で彼女はそう言った。

動揺してはいなさそうだ。


むしろ、余計に距離を置いた気がしないでもない。


なぜかそれに、俺はほっとした気持ちになる。


「はは、やられた。

リュネちゃんならそう答えるんじゃないかって思ったよ。

でも、・・本気だったら・・どうする?」


彼は微笑し、そう笑って言いながら、

最後は、ゆっくりと真剣な表情で、彼女を見つめて問いだした。


兄の目が、爛々ときらめいてみえる。

まるで獲物を狙って・・絶対に逃しはしないようなそんな輝きだ。


俺は、兄のその目の裏に隠されたそれを悟った瞬間、

もう、我慢ができなくなった。


答えさせてはならない、そう直感させた。


そして、答えを聞きたくない・・その気持ちが、抑えられなくなっていく。

いやだ、聞きたくない!邪魔がしたい。


王族に、いくら対等といえようとも、断るはずがないだろう。

いや、断りたくても断れないはずだ。


「・・兄上」


俺は、話に割って入るが如くに兄を呼んだ。

これで話は途切れるはずだ。

・・いや、もうその話はさせない!

俺がこいつを、貰う・・!!


「おぉー!リクトじゃないかっ

来るのがちょっと遅くなったんじゃないか?」


俺の心中など知ってか知らずか能天気な声で彼は俺を迎え入れる。


邪魔が入ったと思ったような表情ではなく、

むしろ、きてくれて助かったような表情で兄は問いだした。


その反応にちょっと拍子が抜けた。


「・・まぁ、いろいろありまして」


そこはなんとかすましたように答え、

俺はリュネに向き直る。


「せっかくだから、堅苦しい挨拶はなしで

もう一度紹介するね、リュネちゃん。」


俺の肩を手で軽くたたいて、兄は、

俺とリュネを正面に向かい合わせにした。


「俺の弟、リクトだよ。

こいつ、結構自己中だから、

遠慮なしに意見言ってやって。」


「兄上、さすがにそんな紹介はーー」


兄の物言いにちょっとムカッとしながら、

突っ込みを入れようとしたら、


「わかりました。

私は、リュネ・リメイルです。

よろしくお願いします」


リュネに、さえぎられた。

しかも、頭を下げられる。


こいつ・・・!


むかむかとした嫌な思いが渦巻く。


あっさり兄には従いやがって・・という気持ちになった。


「あ、あぁ」


だが俺は、苦い思いでうなずくしかなかった。


そして、このときを待っていたかのように、


「リクト、俺は他にもあいさつとかあるから、

リュネちゃん、よろしく頼むよ。

リュネちゃん、じゃぁまたね」


早々と兄はその場を去っていった。


「兄上・・」

「はい。」


二人きりの状況を望んでいたはずなのに、

なぜかやりきれない気持ちになって、そのまま兄を見送るしかできなかった。


リュネは俺とは反対に、動揺した様子なくうなずいた。


「・・・」


「・・・」


しばし気まずい沈黙がその場に流れる。

お互い、顔を見やると、彼女が呟いた。


「正直助かりました、殿下が来てくださったおかげで、

答えなくてもよくなりましたから」


このときの彼女は、兄と同じように俺との間に一線を引いていた。


そして、この言葉に俺は苛立ちを感じた。


俺が来なかったら・・、俺が邪魔しなかったら

彼女は断らなかったということが明らかになったからだ。


「じゃあお前は、俺が声をかけなかったら、

あの言葉にうなずいていたのか?」


「・・はい」


彼女は渋りながらも、首を縦に振った。


そこに、俺の苛立ちが最大値まで上がる。


俺は彼女に詰め寄った。

詰め寄らずに入られなかった。


所詮、対等とは言えど、うなずくしかないのだ、王族の言葉には。


それがどうしても俺をムカつかせる。


「そうだな、お前はうなずくしかない、

所詮、お前は、王族には抗えない・・、そうだろ?」


苛立ち紛れに、彼女に八つ当たりをする。


「それは・・」


彼女は俺の言葉に退き、一瞬の迷いを見せる。


その迷いこそが、彼女をなじる方向に俺を引っ張った。


「王族に嫁げば、地位は認められ、暮らしも今より豊か、

さぞいいおもいができるだろう。

お前も、それを望んでいるのだろう?

誰にでも優しい兄につけこんで」


実際兄は、女を利用し傷つけるような奴だが、それは裏だ。

表向きは、優しい女好きだろう。


俺は彼女と距離をなくし、壁まで追い立てた。


「私は、私自身は、そんなのほしくない。

だから、助かったと、殿下に言ったでしょう」


彼女は何か押し隠すようにそう答え、

先ほどとは打って変わったように、強いまなざしで俺を見つめた。


これが、こいつの本性か。


リュネのその反発した意見は、俺の心に火をつけた。






リュネ、今と過去では違うっぽく感じるかもしれませんが、

最初は心を開いてなかったんですよね・・


リクト殿下の“s”の闘志に火をつけました。

さぁ、これからです^

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