プロローグ [作家:我那覇]発端
クリスマスパーティで忙しく動き回っていたアオシマくんに手土産を渡すと、わたしは帰路についた。
思えば大変な道のりであった。わたしはこれまでのことを振り返る。アオシマくんへの感謝はどれほど言葉を尽くしても語り足りないほどだ。
わたしは四十歳を前にして、どうにか短編小説の賞を受賞することができた。
結局その短編は本になることはなかったが、担当編集としてアオシマくんがついてくれた。彼はわたしの初めての本を作るため、これまでストックしていた原稿のすべてに目を通してくれた。
企画会議の前、深夜まで及んだ打合せのあとで「これから編集部に戻って、夜を徹して企画書を煮詰める」と語っていた姿を思い出す。プロモーションのアイディアを語る彼の目は、少年のように輝いていた。二十種類以上のプランを並べ、そのどれもが作品への深い愛に満ちていた。身体は疲れているだろうに終始笑顔を絶やさず、熱意を持って作品を送り出してくれたのだ。
あるいはアオシマくんは、わたし以上にあの作品『ファントム・オーダー』を愛してくれたのかも知れない。
自然と目頭が熱くなる。彼と一緒に本を作るのはとても楽しかった。
明日の発売を迎えることで、わたしたちのこれまでの苦労が報われるのだ。
手土産に忍ばせた手紙のことを考えると胸が痛む。彼はあの手紙を読み、何を思うだろう。




