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異世界、ダメ、絶対!!もう誰も異世界には行かせません!!  作者: イタノリ
揺籃編

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閉門作戦 3

 敵陣地へと突撃した隊員達は、各々が持つ近接武器で敵を次々と打ち倒していく。槍で突き刺し、斧を振り下ろし、剣で切り払い、次々に敵が斃れていく。さらに敵に追い打ちがかかる。突撃した戦車とは別に、後方で砲撃していた戦車が突進し、猛然と敵陣地へと突撃したのだ。


 その光景たるや、モニター越しでも分かるほどに血しぶきが舞っているのが分かる。瞬く間に戦車の履帯や装甲が赤く染まり、肉片がべちゃべちゃと張り付く。敵に大打撃を与えている。


 なおも、戦車は敵戦列を蹂躙し、砲弾や機関銃を敵に向け発砲し続けている。そのほとんどが敵の魔法で防がれ、あるいは砲弾を逸らされて命中しなかったが、防御魔法を飛来物に限定させることで、魔法や物理攻撃への防御魔法が展開できていないようだ。


 戦いの素人の俺でも分かるほどの連携力の高さ。日頃からハルモニアの訓練を目にし体験しているのに、ここまで練度が高かったのだと思い知らされる。味方の猛攻に敵兵は狼狽し、戦線が崩れつつあった。戦況はこちらが圧倒的に有利のようだ。


「このまま、勝ちそうな勢いだ。すごい・・・」


 思わず漏れる声に、小林君や小隊の面々はどこか誇らしげだった。しかし、そんな表情は一瞬で変わり、それで済むならそれに越したことはないんですがねと、小林君はまたポツリと呟く。


「ポータルの奥にどれだけの兵力が控えているかは不明です。このポータルの大きさだ。一度にどっと大量の敵兵が出てくることはないでしょうが、まるで無限湧きみたいに敵兵が出て来るのがいつものパターンです。普通に戦ってたらジリ貧ですよ」


「そういえば、敵の魔法使いが見当たらないけど、どこにいるんだろう」


「防御魔法を張っている奴らは上手いこと隠れたり護衛に守られながら戦場のどっかにいますよ。ポータル開いてるやつはポータルの中ですね。一番安全な場所で魔力が尽きるまでポータルを開き続けます。現在のハルモニアの戦術としては、その魔法使いの魔力が尽きるまで敵の侵入を阻止するのがセオリーですが、時々やたらと根性のある奴がいましてね。そういう時は無理にでも魔法使いを仕留めにいきます」


「ということは、ポータルの中に入っていくのか?」


「そういうこと。ただ、ポータルに入り、ベイル側で魔法使いを殺すとその場でポータルが閉じちゃもんですから、一旦こちら側に連れて来てから始末しなければなりません」


「おっ、おう・・・」


「ポータルに押し入るこのパターンは、持久戦がきつくなった時に致し方なく取る戦法なんですが、なんせ無理やり敵陣地に押し入るもんですから、被害が大きくて、大きくて。死に物狂いの敵にやられたり、魔力が尽きると見せかけて引き込んだところでポータルを閉じられそうになったり。こちらに戻れず取り残された戦友も、少なくありません」


「・・・そのとり残された人達は・・・」


「推して知るべきですね」


「そうだったのか・・・」


「びっくりするくらい泥臭いんですよ。ベイルとの戦いは。だからこそ、ハルモニアはムロさん達に期待を寄せずにはいられないんです。これは、今後の敵性異世界との戦闘においても大きなアドバンテージにもなるし、なにより被害が少なくなるに越したことはない。俺たちだって無闇矢鱈に殺したり殺されたりしたい訳じゃありませんから。でも、だからといって、変なプレッシャーを感じないでください。もうムロさんは俺達みんなの仲間だ。室さんにも傷ついてほしくない。だから、生き残りましょう。任務を達成した上でね」


 小林君は微笑みを向けながら、親指を立てる。


 銀舎利をはじめ、アーロンやセシリア、それに他の隊員のみんなも俺を見つめ、小さく頷いてみせる。


 みんなの表情をみて、俺は今までにないくらい、熱いものが胸にこみ上げるのを感じた。俺も頷き返し、任務への気持ちを新たにする。絶対にやり遂げてみせると。


「よし、敵が喰いついてきた!別働隊、出撃準備!」


 司令部から俺達にもついに出撃命令が出された。セシリアの映像を確認すると、前線部隊は敵の攻撃を受け後退するように見せかけながら敵を引き付けているのが分かった。


「よし、陽動は成功だ。俺達も目標地点に行くぞ。気取られぬよう、慎重に迂回しつつ目的地に向かう。全員俺に続け」


 銀の指示のもと、別動隊が行動を開始する。


 戦場は背の高い草が茂っていて、身を隠すには絶好の場所だった。俺達の隊は速やかに移動をしていく。気づけば、夕日が沈む頃合いだ。隠密行動にはもってこいだろう。


 平野からは轟音が響き続けている。


 銃撃の閃光や魔法が放つ光で戦場が照らされている。


「室田、前を見ろ。被害を最小限に留めるにはお前がポータルを閉じるしかない。目標地点を目指せ」


「りょ、了解」


 さすが銀、現場の状況把握だけではなく、俺の様子まで見ている。緊張と不安で落ち着きがなくなっているのは自分でも分かったが、銀の指摘を受け改めて気合を入れなおす。


 だが、轟音や爆発音は耳に轟き、燃え上がる火や爆炎が眼の端に移る。悲鳴や怒号が飛び交い、互いの命をかけ殺し合っている音が聞こえる。


 走れ、走れ、走れ。とにかく進むんだ。少しでも早く辿り着け、一秒でも早くポータルを閉じろ。俺にできるのはそれだけだ。


 心の中で必死に自分に言い聞かせながら、小林君のケツを追いかけ続ける。部隊が前進を止めた。ポータルが視認できる。どうやら、敵に気づかれないギリギリまでは無事にたどり着けたらしい。


 市村隊から無線が入る。


「市村隊より司令部へ。こちらは予定のポイントに到着。現在待機中です」


 よかった。市村隊も無事にたどり着いたらしい。


「こちら銀舎利隊。こちらも予定のポイントに着いた。指示を待つ」


「こちら司令部。敵は攻撃部隊に食いついてる。ポータル周辺には守備兵が多数いるが、君隊ならものの数ではないはずだ。任務を遂行せよ。健闘を祈る」


「了解。これより任務を遂行する」


 司令部からの命令が下りた。いよいよ俺達の出番だ。


「聞いての通りだ。ポータル周辺には守備兵しかいないはずだが、警戒を怠るな。常に不測の事態に備えよ。行くぞ!」


 銀の合図で、俺達は茂みから躍り出て、ポータルめがけて突撃をはじめる。だが、その瞬間、鬨の声を上げ敵が一斉に現れた。


「伏兵だ!応戦しろ!」


「なぜだ?!こちらの作戦がバレてたってのか?!」


「敵の数が多いぞ!狙いを振り分けて撃て!」


 部隊の皆に僅かだが混乱が生じた。しかし、狼狽する間もなく敵の大群がこちらに向かって攻めてくる。ポータルは目と鼻の先にあるというのに。


「うろたえるな!全員、敵戦列に向かって射撃用意!セシリア、防御陣地の形成急げ!」


「わかりました!皆さん、前方に注意して下さい!土塁を構築します!」


 セシリアが叫ぶ。すると、小隊の前面の地面がボコッと盛り上がり、あっという間に俺たちの体を隠せるだけの土塁が作られた。敵の突撃を防ぐべく作られた土塁は、身を隠し射撃するのに丁度いい高さに作られ、まるで壁のようだ。ご丁寧に銃眼まで開けられている。


 俺は、相変わらず小林君の陰に隠れながら様子を見守るほかなかった。が、射撃の陣形が完成した途端、グイっと後ろ襟を掴まれ、部体の後ろまで引っ張られたと思ったら目の前に赤い目玉がぬうっと現れた。アーロンだ。どうやら、力づくで無理やり後方へ移動させられたようだ。


「ムロさんは作戦の要です。私の背に隠れていてください」


「おっ、おう」


 隊員達は素早く配置につき、射撃体勢を整える。咄嗟にここまでの土塁を構築するとはさすがエステルのお弟子さんだ。


「まだ、撃つな。十分に引きつけよ」


 敵が雄叫びをあげ武器を振り翳し、こちらに突撃してくる。どんどん、敵の姿が近く、はっきりと見えてくる。


「今だ!撃て!」


 銀の命令と共に、けたたましい発砲音の嵐。魔弾がまるで花火のように閃光を放ち、暗闇を貫いていく。つんざくような音がこだまする。炎なのか、雷なのかわからないが、凄まじい光と爆発が辺りを包んだ。


 敵が倒れていく。辺りに、焼ける匂いが漂い始めた。これは、敵兵の体が焼かれているのか?思わず、鼻を腕で覆う。


 後方には。俺とアーロンの他にセシリアがいる。彼女は何やら詠唱をはじめた。気づけばアーロンも精神を研ぎ澄まし、力を蓄えているようだった。全身の黒い毛が少しずつ逆立ち、体から黒い何かが漏れ始めている。


「攻撃の手を緩めるな!セシリア、アーロン、用意はいいか!」


「いつでも、どうぞ!」


「私も、同じくです」


 敵は屍を踏み越えて、なおもこちらに突撃して来る。まるで死を恐れていないようだ。


「今だ、放て!」


 アーロンは唸り、その逞しい両の腕を天に勢いよく天に突き上げ振り下ろすと、敵の敵陣で大爆発が起きた。激しい炸裂音が響き、車ほどの大きさの火球がいくつもいくつも降り注ぎ、あたり一面焼け野原と化し、至る所で炎が渦を巻いている。攻撃を受けた敵兵は生きながらに焼かれ、のたうち回っている。


 次いで、詠唱を終えたセシリアが魔法を放つ。燃え盛る敵陣内に、今度は鋭い何かが降り注ぎ、生き残った敵兵を貫いて行った。キンッと、敵兵の鎧に弾かれた鋭い何かが俺の足元近くに転がってきた。これは・・・、氷か?なるほど、氷の釘のようなものを魔法で降らせたのか。


 味方から歓声が上がる。


「さすがだな、アーロン、セシリア」


「いえいえ、みなさんが敵をひきつけてくれたお陰ですよ」


 あくまで、セシリアとアーロンは冷静だった。そして、俺もハルモニアの戦い方というのを、なんとなくだが理解した。


「よし。道は開けた。このままポータルに向かって一挙に攻め込む。皆、ついてこい!」


 銀の号令の下、全隊員がポータルめがけ駆けていく。


「ムロさん。俺が先導するんで、しっかり付いてきてください!」


「了解!」


「アーロンとセシリアはサポートよろしく!」


「分かりました。任せてください」


 火炎渦巻く戦場を、仲間達と共に駆けていく。


 先頭を行く銀は行く手を阻むため新たに現れた敵兵を現れては瞬く間に切り伏せていく。脇からも新たに駆けつけた敵兵や、アーロンの攻撃で仕留め損ねた敵兵を隊員達は次々に小銃で確殺している。どうやら、先ほどのアーロンとセシリアの攻撃で付近の敵魔法使いも排除できたようだ。


「こいつはツイてる。魔法攻撃でどうやら前線の魔法使いは始末できたらしい。こうなりゃ有利に戦える」


 状況を俺に説明しながらも、小林君も散発的に現れる敵兵を確実に小銃で仕留めていた。


 それにしても、敵兵の士気の高さには恐れ入る。次々と襲い掛かってくる敵兵は、明らかに先程の魔法攻撃で負傷している兵も多い。歩くことすらやっとというのに、剣を振りかざし攻撃しようとしてくるのだ。


「もう少しで、ポータルだ。全員、射撃用意!」


 走りながらも銀の命令が下る。気が付けば炎の勢いも弱まり、あたりの景色が一気に広がる。


 そこには、今まで見たこともないようなポータル、そしてそれを守備している敵の一団がいた。数こそ多いものの、明らかに混乱している様子だ。よほど魔法攻撃がきいたのか、統制が取れていないようだった。


 銀はすかさず指示を飛ばす。


「室田!出番だぞ!ポータルを閉じろ!」

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