技術部員、ジーナ 3
ポータルに触れることが確認できたので、エステルとジーナの指揮の下、様々な実験が開始された。俺と巴ちゃんは、エステルが開いたポータルを何度も何度も閉じていく。
ポータルは力づくで押し潰せば、簡単に閉じることができた。空中に固定されたフラフープを端と端を潰し円フラフープの円を潰していくような要領だ。
ポータルを閉じるのは、意外と力を使った。俺は昔からの肉体労働と日々の訓練のお陰でそこまで疲れはしなかったが、元々運動をあまりしていなかった巴ちゃんは、訓練も俺同様にこなしていたが、少々堪えていたようだ。
「よし、今日のところはここまでにしよう。みんな、お疲れ様」
ようやく実験が終わり、俺と巴ちゃんは休憩室へと案内されベンチへと座り込む。
「巴ちゃん、大丈夫?」
「なんとか・・・。いくら訓練をはじめたからって、やっぱり事務員しかしてない身には堪えるわ~」
巴ちゃんはヒィヒィいいながらも気丈に振る舞っている。俺はそんな健気な巴ちゃんに尊敬の念が絶えない。
「いや~、今日は本当にありがとうございました!とても有意義な実験でしたよ!」
ジーナはとてもにこやかに言いながら、俺と巴ちゃんに青い液体が入った瓶を渡してきた。
「これは一体、何ですか?」
「ポーションってやつです。聞いたことはありませんか?中核世界ではまず手に入らない、体力回復アイテムです。エナドリほど美味しくはありませんが」
これが、かの有名なポーションか。ゲームでしか登場しない架空の飲み物をまさか現実に飲む日が来るとは。
早速、ビンの蓋を外し、一口飲んでみる。その味は、何とも表現しがたい薬草的な何かの味をしているが、不思議とのど越しが良く、味を気にしなければ割と飲める代物だった。
「ん?お?おおおお?」
驚きだ。さっきまでの体の疲れがサーッと消えていく感覚。巴ちゃんもポーションの効果を実感したらしく、グビグビとポーションを飲み干していく。
「マズい!けどすごい効くコレ!」
ポーションをのむだけでここまで一気に回復するとは、恐るべしポーション。
「これは実験に付き合ってもらったお礼です。味に関しては、エナドリ目指して改良中なんで、期待していてくださいね」
ジーナが言っていた技術革新にはこういったものも含まれるのだろう。なるほど、こんな便利なものが現代社会に普及することができたら、それは素晴らしいことだ。
ジーナは一息ついたところを見計らって、実験の今後について話してくれた。細かいことは俺の頭では理解できない話ばかりだったが、簡単に言うと、なぜポータルに触れることが出来て、かつそのポータルを閉じることが出来るのか、魔法と科学の両面から研究していくとのことだった。
「とにもかくにも、ポータルをこちらから閉じることが出来るというのは僥倖です。異世界転移は、先ほどエステル様がやってみせたように、術者が魔法を行使しするものです。これはハルモニアが管轄する異世界からの武力侵略から中核世界を守るうえで強力な対抗策になり得ますからね」
ジーナはとても興奮している。技術部の職員たちの反応からしても期待以上のものだったらしいが、こちらはというと、なんだかプレッシャーを感じてしまう。それに、異世界問題はポータルによる転移だけではない。
せっかくなので、素朴な疑問をぶつけてみる。
「俺たちがポータルを閉じれるのはいいとして、他にも異世界への渡り方はあるんですよね?そちらの対策は何かありますか?」
「ほほう、室田さんはご興味がおありな様子で・・・。よろしい、説明しましょう!」
いかん。変なスイッチを押してしまったかもしれない。俺が後悔する間もなく、まくしたてるようにジーナは説明を始めた。
「現在、判明している異世界への渡り方は三通りあります。それは、転移、転生、召喚です。転移はポータルを介することで直接、異世界へと渡る方法です。転生は、何らかの理由で死亡した人間の魂が異世界へと生まれ変わることです。召喚は読んだ時の如く、異世界へピンポイントで呼び出される事です。
不思議なことに、どの方法においても異世界へ渡った人間は特殊な能力に目覚めることが多く、能力の強さ、有用性は人それぞれのようですね。現在、ハルモニアは具体的に対処が容易な異世界転移に注力していますが、今回の実験により効果的な策を講じることが可能になることが期待できますが、問題は残る二つですね。召喚にしても生まれ変わりにしても、こちらで防ぐ方法は今のところありませんからね。
ちなみに、座学で教わったと思いますが、この世界には魂と呼ばれる人間の核となる存在はすでに発見されています。魔法においても魂が担う役割は大きく、魔法にとって無視できない要素です」
怒涛の勢いで説明を始めたジーナの説明は、ポーション片手に聞くのがちょうどいい気がする。逃げる機会を逃し、この後、延々とジーナの説明を聞くことになるのだが、ポーションのお陰で疲れることなく帰路につけたのはポーションのお陰であるのは言うまでもなかった。




