第9話 意外な特技。
お茶会の時間の少し早めに出向いたはずなのに、もうお客様がいらしていて、殿下とお茶を始めていらした。
「遅くなって申し訳ございません。ブラウ国、キャサリン王女殿下にご挨拶申し上げます。」
スカートをつまんで、深い礼を取ると、後ろについてきた妹もそれをまねた。
「殿下の婚約者の、フラヴィと申します。こちらは私の妹でございます。」
『んまあ、地味な婚約者ね?侍女かと思ったわ。』
今まで難なくフール語で殿下と話していた王女が、急にブリア語で話しかける。
かるーく試されていますかね?
『王女殿下の美しさの前では、なにもかもくすんでしまいますわ。』
ブリア語でお世辞を忘れない。にっこり笑って受け流す態勢に入る。
「まあ、挨拶はそれくらいで、座れ。ジュリエンヌも。」
殿下に椅子を勧められたので、ようやく座る。
ほどなく、みんなのお茶が入れ替えられる。席は丸いテーブルに殿下の右隣に私、殿下の左隣に王女殿下、ジュリエンヌは私の隣…でも、殿下と王女の席が異様に近い。
妹は…さすがに今日はおとなしい。ぼーーーっと王女殿下を見ているようだ。
あんまり見つめるのも…失礼よ?綺麗な方だけど。
私たちの存在などほとんど気にしないで、王女殿下が殿下にすり寄って話しかけている。わ・た・し・は気にしませんがね、普通は婚約者のいる男性に、そうそうすり寄るものではありませんよ。
「…お姉様…」
「なあに?」
気にしないでお茶を頂いていたら、神妙な顔をして妹が小声で話しかけてきた。
「お姉様…私、恥ずかしいですわ…私が今までやってきたことって、あんなに見苦しくて恥ずかしいことでしたのね…」
あら、まあ…他人の振り見て、我が振りなおせ、ってやつですね?
すごいわ!ジュリエンヌ!なんておりこうさんになったのかしら!!
「まあ、それは良いんですけど…我慢できないこともありますわ!」
…それは、いいんだ?
『失礼を承知で申し上げます!王女殿下!』
え?????待って、待ってジュリエンヌ!
ブリア語は思ったより上手だけど…
『王女殿下!化粧品があっていませんね?』
……え?
『肌荒れを隠そうと、どんどんと厚化粧になさっていますね?逆効果ですわ!肌がかわいそう!!!』
…ジュリエンヌ…
殿下も王女殿下もいきなりの発言に固まっているし…
『基礎化粧品はブリアのアイリー化粧品をお使いですね?最高級品ですから。でも、油分が多い製品なんです。肌が荒れていて、しかも、だんだんと暑くなるこの時期にはお勧めできません!』
「え?」
『洗顔も香料がみっちり入ったせっけんを使っていらっしゃるでしょう?肌が…悲鳴を上げていますわ!!!』
「……」
『私が貴女の肌を救って差し上げます!!!』
先ほどから立ち上がって熱弁をふるうジュリエンヌ…
言うだけ言って、ふんすっ、と鼻息をつく妹。
え、と…ジュリエンヌ?冷や汗ものだわ…
『おほほほほっ、そうなんです。妹はその人その人に合った化粧水を調合してくれるんですの。私も母も、妹特製の化粧水を使っておりますのよ。おかげで肌トラブルはないんですの~。』
妹を急いでフォローする。もう…連れて帰ろうかしら…。
そう思って妹の手を取ろうとしたら、キャサリン王女がガバリ、と妹の手を取った。
「私の肌を、救ってください!」