第7話 飴と鞭。(飴)
私と二人きりの話が続かない週一のお茶会に、殿下も辟易していたらしく、妹を呼んでいいかと言ったら、割とすんなりOKが出た。
社交界好きの二人だが、接点はなかったらしい。
「お前の妹のうわさは聞いてるよ?ちょっと軽めのバカっぽい子なんだろう?」
いや…まあ…完全に否定はできかねますが…
あなたにそんな顔で小ばかにされる筋合いはないと思いますけど?
そう思いながら、にやけている殿下の顔を眺める。よし。
「ジュリエンヌ!喜んで!殿下からあなたをお茶会に誘っていいと許可を頂いたわ!」
「まあ!お姉様!嬉しいですわ!」
家に帰ると、妹に早速報告する。キャッキャ言って喜んでいる妹にくぎを刺しておかなきゃね。
「何を着て行こうかしら?お父様にドレスを買ってもらおう!宝石もいるかな?」
「ジュリエンヌ。」
「はい?あら、お姉様、またお肌のお手入れをさぼっていますね?お姉様は肌がきれいだけど手入れしないとあっという間にくすんでしまいますわよ?」
…そう。この子は美容は手を抜かない。私用の化粧水も調合してくれた。もちろん母も自分用の化粧水をジュリエンヌに作ってもらっている。こういうところがな…生意気で我儘でも憎めないところではあるわね。
「…はいはい。ところでね?殿下にあなたはバカだ、と思われているみたいなの。」
「ひっ。」
沸騰しかけたお湯に差し水。
「社交界でどんな噂が広がっているのか知らないけど…あなた…処女よネ?」
「まままままっ!お姉様!私だって幸せな結婚を目指しているんですもの、一線を越えるようなことはしていませんわ!!!」
…と、いうことは、その直前までは?まあ、いいか…この子が処女でなかったら、私の努力も無駄になるところだった。なにせこの国で高位貴族に嫁ぐ最も尊い嫁入り道具は、それ、なんだから。
「わかったわ、ジュリエンヌ。変なこと聞いてごめんなさいね。じゃあ、次のお茶会に向けて、お勉強をしましょうね。」
この国の歴史書。貴族名鑑。家紋と家名…この辺は妹のお得意分野だったらしい。
お嫁に行くならどこがいいかなあ、と、妄想しながら名鑑を眺めていたらしいから。
各領地の特産品、地形の特徴…
「こんなことを勉強して、何になるんですか?お姉様?」
「だって、考えてみて、ジュリエンヌ?何を聞かれても答えられたら、殿下もあなたのことをバカだとは思わないでしょう?そうしたら…また誘っていただけるかもしれないわ?ね?」
お茶会当日は、控えめな、それでも薄いピンクにフリル付きのドレスに、控えめな化粧。アクセサリーも抑えめ。
ジュリエンヌには、余計なことをしゃべらないようにくぎを刺す。
「いい?まずはあなたのバカっぽい、軽い、っていう噂を打開するわよ?」
「はい!」