第4話 理想の女性。
私の婚約者、第一王子のアンドレ様の理想の女性像は把握した。
はっきり言って…嫌味なのかもしれないが、私と少しも被るところがなかった。仕事ができる、あたりだけだろうか。ここは多分、彼の中ではポイントが低い。
まず、私はサラサラ銀髪だ。
顔もどちらかと言えばキツネ顔。きつそうな顔に見えるらしい。
いつも着ているのは、紺色のシンプルなドレスが多い。紺が好きだから。
ピンクとフリルねえ…。着てもいいけど背が高いので似合わなそう。
…ゆえに、殿下の理想とする小動物系は不可能だな。
あとは…甘え上手、ねえ…だってーと定冠詞を付けた自己主張ねえ…。
え?ちょっと待って。
性格や表現方法ならまだしも、背が低いとか金髪くりくりとか?物理的に無理なんじゃない?百歩譲って、髪は染めて巻いたらまあ…何とか?
殿下付きの侍女に頼んで、美味しかった焼き菓子を少しもらってきた。今日一番の収穫である。
帰りの馬車で、いろいろ考えていたら、ばかばかしくなってきた。それでも…この婚約自体、自分の意志でどうこうできる事案ではない。
ふうっ。
自分の屋敷に帰り着くと、疲れがどっと出た。
王子妃教育は良い。先生方はみな立派な方たちだし、とても勉強になる。…今日のような週一での殿下とのお茶会が一番こたえる。
「ただいま戻りました。」
自室で夕食用に着替えていると、いつものように妹がやってきた。
「ねえねえねえ、お姉様?どうだった?王子妃教育って何やっているの?殿下と会っているんでしょう?あの方、かっこいいわよねー!いいなー」
「…ジュリエンヌ?それより、あなたの領主教育は進んでいるのかしら?執事長が困るようなことはしないでね?」
「えーだってー!執事長の教え方厳しいんですもの。」
きゅるん、と上目遣いで私を見る。この子、また文句言って困らせたに違いない。あとで執事長に謝っておこう。やはり、私か父が直接教えないと甘えが出てダメか…。
金髪くりくり、今日もピンクのドレスにフリルが……
あれ?
父に似た私とは対照的・・・
ジュリエンヌは母に似て、小柄な狸顔。
…小動物系、ってこういう子?
甘え上手、な意味はよく分からないが…確かにこの子は自分に甘い。
あら?
あらあらあら…