第14話 婚約解消。
「体調は大丈夫なのか?」
ぼっーっとしていた私に、殿下が労わるような言葉をかけて下さったので、驚いて殿下の顔を見る。
「え…はい。寝込んでしまって、申し訳ございません。」
「いや。疲れが出たんだろう。君はよくやってくれている。王子妃教育だってほとんど終わっているんだ。もう少し、ゆっくりしてくれていい。」
「…ありがとうございます。」
昼下がりのお茶室は静かだ。
時折、カップをソーサーに戻す小さな音が聞こえるぐらい。
私の計画では…久しぶりに会った二人が、ジュリエンヌのお粗末な刺繍ネタで盛り上がって…殿下がジュリエンヌへの恋心を確信に変わらせて…
公的な婚約のお披露目である12月の大舞踏会に、私に婚約破棄を突き付けて…
2人は見つめ合ってダンスを踊る…ってな…
はああっ…私、何の覚悟もなかった罰が当たったんだわ。高熱の中、そんなことを思った。我ながら、そんなことで熱を出して2週間も寝込むとは思わなかった。
バカは…私だな。不誠実過ぎるのも、私だ。
「フラヴィ嬢?」
「…はい?」
殿下に名前で呼ばれる日が来るとはね…。
「僕は…今まで他人に対しても自分の立場にも不誠実過ぎた。君と君の妹が教えてくれた。」
ん?
「僕は…心から愛する人を見つけた。だが、その人に…僕に婚約者がいるのにそんなことを言うのは不誠実だ、と言われたんだ。」
え?いつ?
「君には感謝している。だけど…僕は気が付いてしまったんだ。自分の気持ちに正直になりたい。君とのこの婚約を解消してもらえないか?」
殿下が私に頭を下げるのを、ぼーっと眺める。え?えええええっ??いいんですか?
「それで、君とのことをきちんと終わらせてから、また彼女にプロポーズするつもりだ。陛下にはもう伝えてある。もちろん、プロポーズを受けてもらえるかどうかはわからないが。」
「……」
「君の大事な時間を費やさせてしまってすまなかった。君にも、君の家にもできる限りのことをしたい。」
この人…すごくまともになったな…
「失礼を承知で…殿下にそこまで言わせたのはどなたなんでしょうか?」
「え…ああ…ジュリエンヌ、君の妹だ。」
「……」
あ、あら。




