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第12話 もう一押し。

「お姉様、刺繍を教えてください。」

「まあ、ジュリエンヌ、どうしたの急に?」

「キャサリン様がハンカチを贈ってくださったの。見て見て見て!!お上手でしょう?」


ハンカチにベビーピンクのバラの花の刺繍。たいそう可愛らしい。キャサリン様は刺繍がかなりお上手なのね。


「では、今日は刺繍の勉強にしましょう。まずは、好きな絵柄を刺繍してみて。」

「はーい。」


やっと領地の視察から帰ってきた妹。父に厳しく教え込まれてきたみたいね。殿下には見合いしているとか言ったけど、そんな事実は…実はない。


なんだか…思っていたより、ここ半年ほどで、殿下も妹も良識あるまともな人間になりつつあって…当初、私が思い描いていた結末が微妙に遠ざかっている気がしなくもない。



いや、しかし…ここであきらめるわけにもいかない。



もんもんと考えながら、黙々と手を動かす。


「出来ました~!」

最後の糸をプッチンと切って、嬉しそうに妹が見せてくれた。


「ん?これは何?ジュリエンヌ?」

「王城の中庭の蔓バラと、王家の紋章です。お姉様にはわかりませんか?」


え?


「殿下のお友達とお友達になっていただいて…その感謝を殿下に伝えたいな、って思っていたんです。」


お友達?…ああ、キャサリン様のことね?お友達、ねえ…。


ジュリエンヌの刺繍を落ち着いてもう一度見る。

ピンクのなにかの塊、と、犬みたいに見えるのが、馬?その後ろの棒切れは、ひょっとしたら…王家の槍、ね?


致命傷だわ…これは…。


…いえ…殿下は妹をなかなか博識、と言っていたわ。ここらで、実はこんな不器用な面もある、っていうのは…魅力かも?かわいらしさ全開かも?賭け、かも?


「お姉様の刺繍されていたのは…これは、なんですか?」


妹が私の手元を覗き込む。


「ドライバーよ。」


「え、と…ネジ回す奴、ですか?」

「そうよ。」



渋すぎるいぶし銀のドライバー。プラスとマイナスが交差している。

グリップ部分は赤と緑。完璧よネ。


我ながら、うまくできたわ。うふふっ。

今晩あたり、リオネルの部屋に放り込んでやる!





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