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虚空の扉~現実を異世界が侵蝕する~   作者: Kochablo
第2話「英雄の導き」
9/9

ep.1 光の鍵と影の兆し

週明けの月曜日。



朝の光がカーテンの隙間から差し込み、レオの部屋の天井に淡い筋を描いていた。


スマホを握りしめたまま、布団の中でうめく。



「“秋葉原の本物のセイバー”って……お前、どんだけ目立ったんだよ……」



テーブルの上にはタブレット。


画面に映るのは、週末に秋葉原で撮られたエリシアの写真の数々。


完璧な立ち姿、光を反射する金髪、鋭い視線、そして圧倒的な存在感。


ネット上では “リアル異世界転生ヒロイン” などというタイトルでバズっていた。




「ふむ……見られていることには気づいていたが、この“エックス”とやらの拡散力、侮れんな」


エリシアはタブレットを覗き込むと、真剣な面持ちで自らの写真を確認していた。




「それ、バズってるって言うんだよ。ていうかもう顔バレしてるし、変装しないとまた人だかりできるぞ」


「……では、レオ。そなたの“キャップ”と“めがね”を借りたい」




「お前、隠す気あるのか……?」


(この天然、確信犯なんじゃないか……?)




レオが半ば呆れながらツッコミを入れていると、エリシアの表情がふと変わった。


窓の外に視線を向け、風の流れを読むように目を細める。




「レオ。今日は、確認せねばならぬことがある」


その声色は、今までの軽さを一転させる緊張感を帯びていた。




「……何かあったのか?」


「今朝方、この世界に微弱な“揺らぎ”を感知した。次元の境界がわずかに軋んでいる」


(次元の揺らぎ……? まさか、また“影”が……?)




嫌な記憶が頭をよぎる。


あの夜の戦い。現実とは思えなかった恐怖。




「確認って、またアイツが出るってことかよ……」


「可能性は否定できぬ。だが、確証もない。だから調査に赴く」




エリシアは懐から透明な薄型端末を取り出す。


操作すると、宙にホログラム地図が浮かび上がる。


「場所は……ここだ」



レオは浮かび上がった地図を覗き込み、すぐに気づく。


そこは、千葉県柏市——市街地から少し離れた林の中だった。



「あそこ……確か、昔はキャンプ場だったけど、今は廃れて立ち入り禁止になってる場所じゃ……」


「分解ポイントだ。この世界において、次元の“鍵”の力が散逸した箇所。干渉の痕跡が強く残る」


「分解ポイント……」


(まるでゲームの設定みたいな話なのに、妙にリアルだ……)




エリシアは、ホログラムを消すと静かに言った。


「レオ。この世界に影が再び現れるとすれば、その兆しは“鍵”に現れる」


「鍵って……前も言ってたけど、なんだよ、それ」



「この世界と、私の世界を繋ぐもの。そして、選ばれし者にしか起動できぬ」


「え、まさか……」



エリシアの瞳が、真っ直ぐにレオを捉える。




「おそらく、そなたが“鍵”である可能性が高い」


「……おいおい、マジかよ……」


(どこまでが冗談で、どこまでが本気なんだ、この人……)




だがその瞳は、あまりに真剣で、冗談には見えなかった。


外では小鳥がさえずり、朝の平穏が広がっていた。


その静けさの裏で、また新たな異変が始まろうとしていた——。

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