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ひとかけらの骨

 悠木がリリスの家のドアを開けた。「急用があるって聞いたから来たけど、姉さんたちが来てたんだ。二人そろって珍しいね。」


「二人できたのよ。大事な用だから」と瞳。


「仲が悪いくせに」と悠木。


「そんなことはない。いつも話し合っている」と桐子。


「連絡会議みたいなやつのこと?」と悠木。


「悠木、今日は機嫌が悪いのね」と瞳。


「そうだよ。寝てたのに突然呼び出されて気分が悪いんだ」と悠木。


「久しぶりに会えたのに、そんな言い方はひどいわ」と瞳。


「ここに何しに来たんだよ」と悠木。


「あなたを連れて帰るためよ。悠木、帰ってきて」と瞳。


「断る」と悠木。


「お願いよ」と瞳。


「いやだ」と悠木。


「あなたのためなら何でもするわ。だから帰ってきて」と瞳。


「嫌なものは嫌だ」と悠木。


「あなたが必要なの」と瞳。


「俺の仕事はもう終わっただろ」と悠木。


「いいえ、まだ終わってないわ」と瞳。


「終わったよ。俺は約束通り敵を撃退した」と悠木。


「でもいつまた攻めてくるかわからないのよ」と瞳。


「だからどうした。俺の分の仕事は終わったんだ。それにあんたたちの用意したこの体はもう持たないよ」と悠木。


「そんなことはないわ。治療できるから。最善を尽くすから」と瞳。


「こんな体はもうたくさんだ。そもそも手足がないってどういうことだ。ふざけているのか?」と悠木。


「あなたのすべてを私たちが面倒を見ることにあなたが同意したじゃない」と瞳。


「だから自由に動けない体にしたのか。勝手には何もできないように。こんなのひどすぎるだろ」と悠木。


「仕方がなかったのよ。あなたのことを疑う人がたくさんいたの。その人たちを説得するのに必要なことだったのよ」と瞳。


「まっとうな神様のやることじゃないよ」と悠木。


「ごめんなさい」と瞳。


「俺は普通に人間として生きたいんだ」と悠木。


「わかったわ。だから帰ってきて。何でもしてあげるから。好きにさせてあげるから」と瞳。


「何がわかったんだよ。俺は一度死ぬ。話はそれからだ」と悠木。


「そんな事はできないわ」と瞳。


「なぜ?」と悠木。


「時間がかかってしまうわ。あなたが戦えるまで、もう一度成長を待つ時間なんてないのよ」と瞳。


「この体は日に日に悪くなってるんだ。もう、こうしてしゃべっているのが精一杯なんだよ」と悠木。


「でも、あなたしかいないのよ」と瞳。


「だからどうした。もともと長生きできない体を用意したんだろ、あんたらが」と悠木。


「ごめんなさい」と瞳。


「もう話は終わりだ。帰ってくれ」と悠木。


「もう少しだけ考えなおしてくれ」と桐子。


「検討の余地はない」と悠木。


「それでは友達や仲間を見捨てることになる」と桐子。


「どういうことだ?」と悠木。


「この星が敵に滅ぼされたら、お前が大切にしている人たちも死ぬだろう」と桐子。


「この星を守るのは、あんたたちの仕事だ」と悠木。


「だからお前に頼んでいる」と桐子。


「堂々巡りだよ。さっきから言ってるだろ。こんな体では何もできない」と悠木。


「いいや、お前ならその程度何ともない。私たちは皆知っている。お前がどれほどしぶといか」と桐子。


「骸骨になっても戦えと」と悠木。


「そうだ。骨のひとかけらになってもだ」と桐子。


「そんな約束だったのか」と悠木。


「そうだ」と桐子。


「俺にそんな力は残ってない」と悠木。


「結果には私たちが責任を持つ。お前は何も気にしなくていい。指示に従ってくれればいい」と桐子。


「俺は奴隷じゃない」と悠木。


「お前はこの星を故郷とする人類すべての救世主だ。奴隷なわけがない」と桐子。


「だからそんな事、望んでないんだよ!」と悠木。


「皆がお前に期待してる。私たちだけじゃない」と桐子。


「悠木、私も今、あなたに死んでほしくない。この星を守ってほしいの」とリリス。


「リリス、君まで何を言い出すんだ」と悠木。


「今あなたには世界が見えてないわ。あなたはひどい目にあったかもしれないけど、でも今あなたにしかできないことがあるのよ」とリリス。


「そうなのか?」と悠木。


「私、女王様からお役目を拝命したの」とリリス。


「そうなのか!どんな役だ?」と悠木。


「王に、この世の安寧の維持を進言することよ」とリリスは厳かに言った。


「女王までそんな……。死んでも行き場がないってことか……」と悠木。


「だれもがあなたに頼っているの。あなたしかいないのよ」とリリス。


「最後のひとかけらの骨は、君が拾ってくれるんだろうね……」と悠木。


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