指示
「あなた方はこの奥之宮の巫女なのでしょう?」と恵子。
「はい」と咲子。
「桐子さんとは話をされないのですか?」と恵子。
「言葉を交わしたことはありません。畏れ多くて」と咲子。
「ではどのように意思の疎通をするのですか?」と恵子。
「神界から指示を受けます」と咲子。
「すごいわね」と恵子。
「ですから、限られたものが限られた条件でしか聞き取ることができないのです」
と咲子。
「儀式の最後で桐子さんが宣言をしてましたけど」と恵子。
「初めてご真声を聞きました」と咲子。「感動に震えました。」
「はあ」とサキ。「桐子さんは寡黙ですが、無口というほどではありません。」
「あなたたちは祭神についてどの程度御存じなのですか?」と咲子。
「個人的には艦長のお姉さんということしか知りません」と恵子。「桐子さんが国生之大神であることは、ここに来る途中の参道の階段を歩いているときに聞かされました。艦長が教えてくれたのです。」
「それで、あなたたちがここに来た目的はなんですか?」と智美。
「儀式の証人になるようにと」と恵子。「まさか結婚式だとは知りませんでした。」
「知らなかったのですか?」と咲子が驚いた。
「ええ」と恵子。「艦長と桐子さんは儀式としか話していませんでした。」
「あなたたちに他に役割はないのですか?」と咲子。
「たしか、艦長が逃げ出さないように見張っておいてくれって言われました。桐子さんの冗談だと思いますが」とサキ。
「見張るというのは、黒い悪魔のことでしょうか」と智美。
「艦長はよくお姉さんたちから逃げるそうですから」とサキ。
「あなたに黒い悪魔を捕まえろと?」と智美?
「ええ、艦長を逃げないように見張っておくことが副官の主な仕事ですから」とサキ。
「逃げるですって!」と智美。「何から、どこへ逃げるのですか?」
「食事とか会議とか、よくすっぽかして空き部屋で寝ています」とサキ。
「どうやって捕まえるのですか」と咲子。「術の心得がおありですか?」
「捕まえて羽交い絞めにします」とサキ。「艦長は抱っこされるとおとなしくなりますから。」
「どうも話がかみ合わないように思います」と智美。「あなた方は、あの祭神、黒魚之風を裏切りの黒い悪魔の転生であることをご存じなのでしょう?」




