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涙の魔術師侵入事件

「ゲート戦争はゲートの大量発生が原因だが、なぜ大量発生が起こったのかはわかっていない。少なくとも私は知らない」とリリス。「原因はともかく、ゲートから冥界の存在がこの世に侵入して狼藉をはたらく事件が多発した。だから、冥界のものが仕掛けたという説があるが、私には分からない。」


「涙の魔術師はそのころから、冥界の魔物と戦い始めたらしい」とリリス。「戦争の前期では一方的に魔物が侵入していたが、その後、ある技術の発明で状況が一変した。」


「ある発明とは?」と舞。


「仮想現実の技術を応用したもので、ゲームのように冥界に侵入できる装置だ」とリリス。「本来は、ゲートを見つけてくぐるのは人間には難しい。だがこの技術により、ゲーム感覚で、というかゲームや旅行のような娯楽として楽しむ人が大量に出てきたのだ。」


「それで、冥界はゲームのアバターで充満した」とリリス。「激怒した女王がアバター達を駆逐し始めたので、この世とあの世との間で戦争になった。これがゲート戦争中期の状況だ。」


「アバターなら人は死なないから、戦争になんてならないのではないでしょうか?」と涼子。


「人間は自分が死んだと認識すれば肉体も死ぬ。それが仮想現実であったとしても」とリリス。「だから、冥界側は死を明確に認識できる形でアバターを処分する方法を開発した。それで大量に犠牲者が出た。」


「行き違いではないでしょうか」と恵子。


「そうだ。だがもう止められなかった」とリリス。「人間側は軍と編成して、組織的にアバターの刺激に耐性のある人間を送るようになった。」


「いつまでも続いたのでしょうか」と恵子。


「ある事件が起こった。それで神々が戦争に干渉を始めて、人間たちを冥界から追い払った。そして両者に条約を結ばせてお互い干渉をしないことにした。これが金沢条約で、これは今も生きている」とリリス。


「ある事件とは、何でしょうか?」と恵子。


「涙の魔術師侵入事件だ」と言ってからリリスは一呼吸おいて、瞳と桐子のほうをちらりと見た。


「実は私はこの『涙の魔術師侵入事件』についてはよく知らない」とリリス。「冥界の奥には龍穴回廊と呼ばれる神界へ通じる通路がある。この通路は地之神により管理されており、龍の一団が番人として常駐している。その回廊に何者かが侵入した。地之神が阻止をしたのだが、その侵入者が人間だった。驚いた神々がゲート戦争に介入を始めて、終息させた。」


「その侵入者が涙の魔術師だったのですか?」と恵子。


「そうだ。というか、涙の魔術師本人からそう聞いた。ほらを吹く人物ではないから事実だろう」とリリス。「神々のほうがよくご存じのはずだ」と言って、瞳と桐子のほうを見た。


 瞳は知らないふりをして目をそらした。桐子は眉間にしわを寄せて厳し表情でリリスを見た。


「この件についてはこれ以上のことを私は知らない」とリリスは言ってこの話題を打ち切った。


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