表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/75

悠木

「わたし、女王様にすぐ連絡を取るわ。あなたはしかるべき保護が受けられるはずよ」と魔女が言った。


「やめてくれ。これは女王も了解していることなんだ」と子供。


「どういうこと?」と魔女。


「言えないよ。君が咎を受ける」と子供。


「気にしないわ。このまま女王様とあなたに不義理をするくらいなら、咎を受けた方がましよ」と魔女。


「神々がすべて了解しているんだ。女王と彼女の世界も含めて」と子供。


「意味がわからないわ」と魔女。


「この世界を守るために、一時的で特別な措置なんだ」と子供。


「概要だけでも教えて。でないと女王様に伝えるわ」と魔女。


「また攻めてきた異星生物どもを蹴散らすためだよ。軍の連中が役に立たないから、ぼくが呼び出されたんだ」と子供。


「裏切り者のあなたを?」と魔女。


「ぼくは裏切ってなんかいないよ。危険人物として消されただけだ。だけどまた必要だからって……」と子供。


「それって、神々の依頼ってこと?」と魔女。


「ちがうよ、命令だよ。断ったのに」と子供。


「断ったの?神々の依頼を」と魔女。


「当たり前だろ。なんでぼくを後ろから撃った連中を助けなきゃいけないんだ。理不尽も甚だしい」と子供。


「その割には、ひどい体ね。神々の加護は受けられなかったの?」と魔女。


「もう、仕事は終わったんだ。先週奴らを撃退したからね」と子供。


「奇跡の防衛戦のこと?」と魔女。


「何が奇跡なんだか。とにかく、もう連中とは関係ないんだ」と子供。


「それで、神々とも社会ともつながりのない白猫を頼ったのね」と魔女。


「ああ、ぼくを無条件で受け入れてくれる優しい女性は他にいない」と子供。


「そして死ぬつもりだった?」と魔女。


「そう、彼女の胸の中でね」と子供。


「少しだけ事情は分かったわ。だけど本当のことだとしたら、私には手におえないわ」と子供。


「だから、知らないふりをしてくれればいいんだ。感謝しているけど、これ以上関わってほしくないんだ」と子供。


「そうなの。じゃあ、あなたたちを拾った親子として面倒を見てあげるわ。それならいいでしょ」と魔女。


「うん、まあ」と子供。


「私がご主人様と親子だなんて、畏れ多いことです」と白猫。


「女と子供が家来とご主人様なんて怪しまれますわ」とトカゲ。


「そうよ、母親と息子ということになさい。住むところを探してあげるから」と魔女。


「ありがとう。申し訳ないな」と子供。


「申し訳ないのはこっちの方よ。こんなことしかできなくて」と魔女。


「とんでもない。ぼくは白猫と過ごせる場所があればそれで十分だ。感謝する」と子供。


「ご主人様、私はうれしゅうございます」と白猫。


「思う存分甘えるからね。白猫」と子供。


「はい、ご主人様」と白猫。


「それからご主人様っていうのはやめてくれ。これからは親子なんだから、悠木って呼んでよ」と子供。


「はい、ご主人様」と白猫。


「だめだって。悠木ってよぶんだ」と悠木。


「はい、悠木様」と白猫。


「悠木だよ。子供に様なんてつけないだろ」と悠木。


「悠木」と白猫。


「お母さん」と悠木。


「ほほえましいわ」と魔女。


「白猫が母親だなんて笑ってしまいますわ」とトカゲ。


「君たちも悠木で頼むよ」と白猫。


「わかったわ、悠木。かわいい名前を付けられたのね」と魔女。


「そうかな……」と悠木。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ