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ガラス瓶

 女王は会話を打ち切ると、肉片の入ったガラス瓶の前にひざまずいた。


「愛しき夫よ、どうかわらわを許してくれ。このような姿になっていようとは、夢にも思わなんだ。すまぬ。本当にすまぬ。わらわは悔やんでも悔やみきれぬ。そなたを地上に送るべきではなかったのじゃ。優しいそなたが身を粉にして働くことは分かっておった。じゃが本当に骨になるまで使役されるとは思いもよらなんだ。鬼畜もおののく所業をなすものにそなたを預けるなど、わらわがどうかしておったのじゃ。」


「そなたの生が一度終わった折に、わらわが迎えに赴くべきじゃった。そなたの労をねぎらい、無念とむなしさをわらわが伴にすべきであった。言い訳にもならぬであろうが、わらわはそなたに遠慮したのじゃ。そなたはこの世界を捨てて、万年に一度の大彗星に乗り、未知の空に旅立とうとしておったのであろう。わらわはそなたの気持ちを知っておったがために何もせなんだ。そなたがわらわのもとにいつか帰ってきてくれるだろうと信じておったのじゃ。それまでは、それまではと……」


「わらわは忠義の士リリーの報によりそなたの苦境を知っておった。せめてあの折に……」


「女王陛下、まだ会見が続いております」とクク公爵。


「だまれ!そなたたちは、われらの冥界の王がかような扱いを受けて何も感じぬのか。そうか、何も感じぬのであろう。そなたたちは、わが夫を王とは認めておらぬからな」と女王。


「女王様、どうか落ち着きを……」とタタ卿。


「それとも、そなたたちには心がないのか?」と女王。


「女王陛下、どうかお気のすむまでお見舞いください。我々はしばらく席を外しますので」と瑠璃子。


「そなたの心遣いを感謝する。じゃがもう構わぬ。会見の続きじゃ」と女王。「そなたたちはわが夫を悠木大尉などと武士(もののふ)の位階をつけて呼んでおるようじゃが、この世ではまだ十かそこらの年端のいかぬ子供であろう。どのような料簡じゃ。わけを申せ」と女王。


「この世で異星生物と戦うために転生させたからです。悠木は生まれたときから武士なのです。女王陛下、あなたもご承知のはずです」と瞳。


「確かに予はリリーに言付けを行った。じゃがまさか牛馬に劣る扱いとは知らなんだ。かような無残な仕儀は妻として断じて看過できぬ。すぐにわが夫を開放せよ。そして冥界のわがもとに返すがよい」と女王。


「この度の会談の目的は、あなたのもとに悠木大尉を返す相談をすることなのです」と瑠璃子。


「どういうことじゃ?」と女王。


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