ゲート
悠木が朝風に帰投してすぐ、艦隊司令部の会議が開かれた。
「ごくろうさま、悠木君」と瑠璃子。
「あんたたち、あそこに敵がいるのを知っていたんだろう」と悠木。
「無人偵察機で調べたの。怪しいから、偵察に出てもらったのよ」と瑠璃子。
「それなら先に言っといてくれ。素人のアルバを連れていくべきじゃないだろう」と悠木。
「あなたがそう言うだろうと思ったから、教えなかったのよ」と瞳。「航空隊には実戦の経験を積んでもらういい機会だから。」
「まだ無理だよ。被害が出たらどうするんだ」と悠木。
「危険は承知よ」と瞳。「皆、覚悟はできているわ。」
「必要のない被害を出したくないんだ」と悠木。
「見解の違いね」と瞳。「実戦の経験を優先するわ。私たちには余裕がないの。」
「それで、ゲートのことも気が付いていたのか?」と悠木。
「ええ、だからウィッチで偵察に出てもらったのよ」と瑠璃子。
「ゲートの規模と発生予定時期はわかったの?」と瞳。
「かなり大きい。前回の防衛戦と同じレベルだ。」と悠木。
「かなりなめられてるのね」と瞳。「前回は、天王星のあたりだったのに。」
「我々に迎撃する戦力が残っていないことを、連中は知っているからだろう」と桐子。「一気に地球を攻め落とすつもりだ。」
「まだ私たちには朝風と夕霧があるわ」と瑠璃子。「絶対ここで食い止めて見せる。」
「それで、ゲートはいつ開く?」と桐子。
「ウィッチで検出した重力の歪みから計算すると、明日か明後日だよ」と悠木。
「いいタイミングだわ」と瞳。
「悠木君、主砲の準備をしてちょうだい」と瑠璃子。「敵が出てきたところを、一撃で殲滅するのよ。」
「敵が分散する前に叩ける」と桐子。「理想的な攻撃の条件だ。」
「出てきた敵を叩けばいいのかい?」と悠木。
「できれば、ゲートの内側も攻撃して。敵の基地があるはずだから」と瞳。
「主砲の出力が足らないよ」と悠木。「ドラゴン級攻撃艦の最大攻撃能力は、前回の防衛戦で試して知っているだろう。」
「今回は二隻分よ。朝風だけでなく夕霧もいるから」と瑠璃子。
「どういうこと?」と悠木。
「朝風に夕霧の重力エンジンを接続できるのよ。だから出力は二倍になるわ」と瑠璃子。「改造してもらったの。」
「ずいぶん手際がいいんだな」と悠木。




