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魔女の家

 住宅街にある古い洋館のドアを白猫は叩いた。


 ドンドン、ドンドンドンドン!


「誰かしら、こんな夜中に。常識はずれですわ」と使い魔のトカゲ。


「出てあげなさい」と魔女。


「嫌ですわ」とトカゲ。


「ぶつ切りにされたいの?」と魔女。


「仕方ないですわ」とトカゲ。玄関の内側から「どなたですか?」と言った。


「助けてください!お願いです!行くところがないのです!」と白猫。


「名前をおっしゃいなさい」とトカゲ。


「それは……言えません、でも怪しいものではありません、お願いです!」と白猫。


「ではお帰り下さい」とトカゲ。


「白猫です!」と白猫。


「そんな知り合いはおりません。お引き取り下さい」とトカゲ。


「開けてあげなさい」と魔女。


「面倒くさいことになりそうですわ」と言ってトカゲがドアを開けた。「うわあ!」


「どうしたの?」と魔女。


「ずぶ濡れの女と子供ですわ」とトカゲ。


「入ってもらいなさい」と魔女。


 子供を抱きかかえた女は家の中に入り、魔女の前に立った。


「タオルを持ってきなさい」と魔女はトカゲに言った。


「この人を、この子を手当てしてください!私のことはいいのです、この子を!」と白猫。


「分かったわ。子供は私が見てあげるから、あなたは自分の体を拭きなさい」と魔女は言った。ぐったりとした子供を受け取り、ダイニングテーブルの上にのせて治療を始めた。



「もう大丈夫よ。死にはしないわ」と治療を終えた魔女が言った。


「ありがとうございます」と白猫は頭を下げた。


「それで、さっきあなた、白猫って言ったわよね」と魔女。「一応、名乗ってくれないかしら。それから、今夜この家にいたいなら、私たちに逆らわないと誓ってほしいわ。」


「私は白猫のフェンと申します。この家ではあなたに逆らわないことを誓います」と白猫。


「いいわ。今夜ここに泊めてあげるわ」と魔女。


「よろしくお願いします」と白猫。


「あなた、公園の石に閉じ込められていたわよね」と魔女。


「はい」と白猫。


「出られたってことは、誰かに助けられたの?」と魔女。


「はい」と白猫。


「それで、何で私の所に?知り合いって程じゃないはずだけど」と魔女。


「申し訳ありません。他に頼れる人がいなかったので……」と白猫。


「そうね。怪我した子供を連れていては、そう遠くへは行けないものね」と魔女。


「はい」と白猫。


「ちょっとはあなたからもしゃべってくれると助かるのだけど」と魔女。


「ごめんなさい。勝手に話せないのです」と白猫。


「誰かの使い魔になってるの?あなたが?」と魔女。


「はい、一応……」と白猫。


「ひょっとして、あの子があなたの主人なの?」と魔女。


「はい」と白猫。


「本当にあなた白猫?主人が死ねばあなたは自由よ。以前のあなたなら見殺しにしてたはずでしょ」と魔女。


「はい。でも今は違うのです。あの人のために生きているのです」と白猫。


「ありえないわ。物の怪が人間のためなんて。ましてあなたは、あの有名な白猫でしょ」と魔女。


「どうしていいのかわからないのです。ただあの人を、どうしてもお守りしたいのです」と白猫。


「白猫ってこんなキャラでしたっけ?」とトカゲ。


「違うわ。でも事情があるのでしょ」と白猫。


「とにかく何か食べなさい。お腹すいてるんでしょ」と魔女。


「ありがとうございます」と白猫。


「でもおかしいですわ。白猫がなんで人の姿をしてるのかしら?」とトカゲ。


「しかも、見たことないほどに完璧な人間の女に物質化してるわね。こんなの飛びぬけたレベルの術者の仕事よ。本当にあなたの主人はあの子供なの?」と魔女。


「はい」と白猫。


「あなたがしゃべらないのなら、あの子が回復してから聞くしかないわね」と魔女。


「はい」と白猫。


「あの子供、何者なのかしら。術者が自由に出歩けるようなご時世じゃないのに。話を聞くのが楽しみだわ」と魔女。

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