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重力エンジン

 火星へ向けての航海を始めて、一か月以上たった。悠木は作戦会議のため、瑠璃子に呼ばれた。


「この頃のあの子たちはどう?」と瑠璃子。


「だいぶましになっている。思ったよりは使えそうだ」と悠木。


「よかったわ」と瑠璃子。


「そろそろ重力エンジンを稼働しなさい」と瞳。


「まだ、実戦は無理だ」と悠木。「重力エンジンは必要ない。」


「だめよ。実戦に対応できる体制を整えてちょうだい」と瑠璃子。「火星に着くまでに主砲を撃てるようにしておいて。」


「なぜそんなに急ぐんだ」と悠木。


「いつ敵が襲って来てもおかしくないからよ」と瞳。「しかも今、外惑星圏にいる戦闘艦は私たちだけなのよ。」


「まったくいないのか?」と悠木。


「何隻かはいるけれど、この宙域で連携をとれる艦はいないわ」と瞳。


「この艦だけでどうするつもりだ」と悠木。


「この艦で戦うのよ!早く戦闘態勢をとれるようにしてちょうだい!」と瑠璃子。


「わかりましたよ、瑠璃子准将閣下」と悠木。



 悠木は会議室を出て、艦橋の艦長席に戻った。ため息をついてから、副艦長の恵子を呼んだ。「重力エンジンを始動する。準備にかかってくれ。」


「いつ開始しましょうか」と恵子。


「今すぐだ。総員、第一種特殊警戒配置につかせろ」と悠木。


「承知いたしました!」と恵子は敬礼をした。「総員、第一種特殊警戒配置!」


「第一種特殊警戒配置、警報を開始します!」と通信士のエリカ。艦内に警報が響いた。「第一種特殊警戒配置発令、繰り返す、第一種特殊警戒配置発令。」


「重力エンジン始動準備!」と恵子。


「重力エンジン始動準備、始めます!」と機関長の舞。


「重力エンジン始動の手順はオレが直接指示を出す。いいな」と悠木。


「承知いたしました!」と恵子と舞が悠木に敬礼した。


「すべての電磁ホイールをまわせ」と悠木。


「第一から第十二電磁ホイールすべて回転開始!」と舞。


「回転を毎秒百に合わせろ」と悠木。


「電磁ホイール、回転数毎秒百!」と舞。


「重力波、検波はじめ」と悠木。


「重力波検波始めます!」とエリカ。


「変動をモニターに映せ」と悠木。「変動を見ながら回転数を微調整しろ。」


「各ホイールの回転数、微調整!」と舞。


「いいだろう。中心重力核を推力原動機につなげ」と悠木。


「中心重力核を推力原動機に接続!」と舞。


「すべての副重力核を順次中心重力核に接続しろ」と悠木。


「最後尾中心重力核を順次前方の副重力核に接続!」と舞。


「各ホイールによる自動重力制御を開始しろ」と悠木。


「各ホイールによる自動重力制御を開始!」と舞。


「重力エンジン点火準備」と悠木。「三十秒間加速する。」


「総員、三十秒間の加速に備えよ!総員、三十秒間の加速に備えよ!」とエリカ。


「重力エンジン点火」と悠木。


「重力エンジン点火!」と舞。


 艦が大きく揺れて、胸を押しつぶすような重力がかかった。


「三十秒だ。重力核を切り離せ。加速を止めて慣性航行に移れ」と悠木。


「全重力核を推力原動機から切断!」と舞。


 重力が標準加速度に戻った。


「警報を切れ」と悠木。


「第一種特別警戒配置解除、第一種特別警戒配置解除」と言ってエリカは警報を切った。


「すべての重力核の自動制御を確認しろ」と悠木。


「すべての重力核の自動制御を確認。異常なし!」と舞。


「第十二副重力核に一般原動機を接続しろ」と悠木。


「第十二副重力核を一般原動機に接続。艦内メイン動力源として使用開始します」と舞。


「悠木艦長、すばらしいわ!よくやってくれました!」といつの間にか艦隊司令席に座っていた瑠璃子が言った。


「ぼくは疲れたので、少し休ませてもらいます」と悠木。


「宮崎中尉をここに呼んでおいたわ。医務室で休んでちょうだい」と瑠璃子。



 稼働した重力エンジンが青い光を放っていることに機関員たちが気が付いた。その後、話を聞いた乗組員が青い光を見るために機関室に押し掛けて大騒ぎになった。あの奇跡の防衛戦で見た、ドラゴン級攻撃艦の放つ青い光は幻ではなかったのだ。


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