士官たち
「この艦の士官を紹介するから会議室に来て」と瑠璃子。
「まだ心の準備ができてないよ」と悠木。
「そんな事はあとでゆっくりしてちょうだい。サキ、合図をしたら大尉を連れて入って来て」と瑠璃子。
「はい、合図があり次第、悠木大尉をお連れいたします」とサキ。
「瞳は私と来て。艦長代理は今日でおしまいだから、艦隊参謀に戻ってもらうわ」と瑠璃子。
瑠璃子は会議室の壇上に立った。
「今日は素晴らしい知らせがあります。喜んでちょうだい。空席になっていた艦長の適任者がついに見つかったのよ。紹介するわ。井沢悠木大尉よ」と瑠璃子。
サキに案内されて、悠木が会議室に入った。集まった士官、全員が言葉を失った。
「艦長を務めることになった井沢だ。よろしく頼む」と悠木。
「これまで艦長代理を務めてもらった天野中佐には艦隊参謀の仕事に戻ってもらいます。何か質問はありますか?」と瑠璃子。
「はい」と士官の一人が手を上げた。
「どうぞ」と瑠璃子。
「これは何かの冗談なのでしょうか?」と士官。
「冗談とは?」と瑠璃子。
「この方が艦長とおっしゃたことです」と士官。
「私は冗談など言っていません」と瑠璃子は少し厳しい口調で言った。
「この子供が艦長ですか?」と別の士官。
「発言を許可した覚えはないわよ、山本少尉」と瑠璃子。
「申し訳ありません。」
「君たちの困惑の気持ちは分かる。申し訳ないが、実は私もつい先ほど任命されて戸惑っているのだ。だが引き受けたからにはきちんと仕事をさせてもらう。腰抜けには容赦しないからそのつもりで頼む」と悠木。
「はい」とさらに別の士官が手を上げた。
「何だね」と悠木。
「艦長の戦歴をお教えいただけないでしょうか」と士官。
「残念だが、それは言えない。機密だからな」と悠木。
「大尉はずば抜けた資質があるから任命されました。あなたたち、少し失礼よ。一人ずつ自己紹介しなさい」と瑠璃子。
「副艦長の佐藤恵子中尉です。」
「航海長の山本綾子少尉です。」
「砲雷長の岩田早苗少尉です。」
「機関長の栗原舞中尉です。」
「通信課の技術長の白石エリカ少尉です。」
「航空隊隊長の佐々木孝子中尉です。」
「航空隊があるのか?この艦には」と悠木。
「もちろんよ。アルバ3型の一個中隊が配備されているわ」と瞳。
「それで、戦歴は?」と悠木。
「防空任務のベテランよ」と瞳。
「宇宙戦の経験はないわけか」と悠木。
「この朝風は新造艦というだけではなく、防空隊にとっては初めての戦闘艦なのです。だから、みな外洋の航海は初めてよ」と瑠璃子。
「全員素人とは……」と悠木。
「だからあなたが必要なのです。期待してますよ、艦長」と瑠璃子。




